19:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:47:36.52 ID:O0jAO63X0
ひなた「その水で染めた布は、貴族に愛好される蘇芳って染め物に負けんくらいの綺麗な生地に仕上がって、とっても高く売れるんだよ」
ひなた「だからその49日間は、村人総出で機を織って染め物をするんだ。そして次の10年後までそれを少しずつ売って食いつないでいく……そうやってこの村は今日までやってきたんだって」
エミリー「そんな……では、村に実りをもたらすために鬼に生贄を捧げているのも同然ではないですか」
ひなた「あたしがかすかに覚えてるのは、鬼に連れて行かれる直前に頭を撫でてくれた兄ちゃんのなまらあったかい手……そのとき兄ちゃんは、こう言ってたんだ」
ひなた「ひなた、達者でな。お前や村のみんなが幸せに生きてくれるなら、おらは満足だ……ってね」
エミリー「そんな……」
ひなた「だからあたしはせめて、兄ちゃんの代わりに家を守っていけるような強い人にならねばと思って、それで育吾郎さんのお父上や近くの武家の人らに何遍も頼み込んで剣を習い始めたんだべさ」
エミリー「……ひなたさんのお兄さんはひなたさんと同じく、とてもお優しい方だったんですね」
ひなた「兄ちゃんがいなくなってからもう10年……兄ちゃんのことを話す機会もすっかり減って、このままみんな兄ちゃんのことを忘れちゃうんじゃないかと思うと、寂しくてね」
ひなた「けど育吾郎さんは今でも兄ちゃんの墓参りをしてくれるんだ。すごいよねぇ。自分が生まれる前に死んで、会ったこともない人だっていうのに……」
エミリー「育吾郎さまは、本当にこの村のことを案じていらっしゃるんですね」
ひなた「そうだよぉ。育吾郎さまが立派なお侍さんになられる頃には、きっともっと良い村になってるだろうねぇ。楽しみだよぉ」
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