64:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:20:20.72 ID:QXbKSZYO0
「……ありがとうございます」
この人の、これだけ気配りができる余裕はどこから来るものなのか。
彼女の行いは、私が黒埼家で行っているような使命感、義務感とは、まるで毛色が違う。
65:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:23:13.08 ID:QXbKSZYO0
――あずましぃ。
「あっ! アーニャ、それってどんな意味!?」
遠くの方でかな子さん達と談笑していた未央さんが、耳ざとくアーニャさんの呟きを聞きつけて駆け寄ってくる。
66:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:24:55.55 ID:QXbKSZYO0
「えっ、ちよちーも北海道出身なの!?」
「はい」
「ええぇぇ、でも、そんなズルいよアーニャ!
だってさっき、明らかにロシア語っぽく「アズマァースィ〜」って流暢に言ってたじゃん!」
67:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:26:37.46 ID:QXbKSZYO0
* * *
当日は生憎の天気だった。
それはシンデレラプロジェクトにとって、ある意味幸いだったかも知れない。
68:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:28:37.68 ID:QXbKSZYO0
「ごめんなさい……! うぅ、うっ、ううぅ……!!」
医務室のベッドの上で、ひどく無念そうに泣きはらす美波さんを、沈痛な面持ちで見守るメンバー達。
思うに彼女は、気ぃ遣いが過ぎたのだ。
69:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:30:19.49 ID:QXbKSZYO0
メンバーが一斉にどよめく。
お前、状況が分かっているのか?
美波さんがこのような状況になっていて、ラブライカの曲をどうやり遂げようと言うのか。
70:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:32:20.81 ID:QXbKSZYO0
――視線を感じる。
言うまでもなく皆の、そして、誰よりもアーニャさんの視線を。
確かに私は、アーニャさんと親しくさせていただいていた。
というより、何故かアーニャさんが積極的に私との交流を図ってくれると言った方が正しい。
71:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:34:19.62 ID:QXbKSZYO0
「ニェット、チヨ」
声が聞こえた方を振り向くと、いつも優しく微笑んでいるアーニャさんが、険しい顔をして私を見つめていた。
「プロデューサーもアーニャも、チヨに言ってほしいです。
72:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:35:39.04 ID:QXbKSZYO0
決して折れない定規を背中に刺したまま、ソイツはその姿勢そのままの真っ直ぐな目で私を見つめ続ける。
「ですが、私はあなたの主体性に期待したいと考えました。
図々しいお願いであることは承知しておりますが、能動的な一歩を踏み出していただきたい。
自分から投げ出すことで得られるものを、その目で見てほしいのです。
73:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:37:20.88 ID:QXbKSZYO0
「チヨ……!」
随分と面倒なことになった。だが、四の五の言ってもいられない。
幸いにして――と言うのが正しいかは分からないが――私はアーニャさんにせがまれ、『Memories』の振付を戯れで模倣したことはある。
74:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:39:10.04 ID:QXbKSZYO0
元々、私のソロ曲は用意されていなかった。
お嬢様を差し置いて、一人で先を行くことを良しとしなかった私が、アイツにそう要求したためだ。
故に、与えられる仕事は、ほとんどがグラビアと呼ばれるビジュアル重視の内容がほとんどだった。
ステージに立ったことも何度かあったが、どれも他の誰かのバックダンサーとしてのもの。
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