64:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:20:20.72 ID:QXbKSZYO0
「……ありがとうございます」
この人の、これだけ気配りができる余裕はどこから来るものなのか。
彼女の行いは、私が黒埼家で行っているような使命感、義務感とは、まるで毛色が違う。
アーニャさんは私の隣に腰を下ろし、自分のペットボトルをクイッと一口飲んで息をついた。
「チヨ、楽しかったですか?」
首を傾げ、星が舞う碧い瞳を私に向ける。
「ミナミが、気にしていました。ワガママに、皆を付き合わせてしまったかと」
「……分かりません。
これが楽しかったのかも、フェスの完成度を上げるために必要なことだったのかどうかも。
ただ、疲れました」
私はかぶりを振って、空を見上げた。
先ほどまで青い空に上っていた積乱雲はいくつにも千切れ、茜色に染まりながら暢気に浮かんでいるのが見える。
「こんなにボーッとした、のんびりした気分は、久しぶりです」
フフッ、と弾けるような小さな笑いが、隣から聞こえる。
見ると、アーニャさんはもう一度水を一口飲んで、どこか思わせぶりにこう言った。
「はぁ……アズマシィ」
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