白雪千夜「足りすぎている」
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160:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:21:25.45 ID:1/ZkFkMM0
 普段は昼のレッスンを行う間の寮がこんなに静かだとは、それをすっぽかすまで知らなかった。

 すっかり見慣れた部屋の、ドアの前に立つ。
 呼び鈴を押しても、電話をしても、やはりと言うべきか、応答は無かった。

以下略 AAS



161:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:24:50.93 ID:1/ZkFkMM0
 お嬢様には失礼だが――電源をつけ、再生ボタンを押した。

「これは……」


以下略 AAS



162:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:28:58.08 ID:1/ZkFkMM0
 業界に入ってまだ日は浅いが、一目でレベルが違うと分かった。

 表情はおろか、指の先の一瞬にまで機微を感じさせる表現力。ターンのキレ。声の伸びと張り。
 彼女のパフォーマンスの隅々が、一挙手一投足が、今日まで私自身がトレーナーから指摘されてきたことを遙かに超越しきっている。

以下略 AAS



163:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:34:23.62 ID:1/ZkFkMM0
「…………お嬢様……」


 城ヶ崎美嘉さん、アーニャさん、凜さん――。

以下略 AAS



164:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:37:15.48 ID:1/ZkFkMM0
 見たい。

 ステージの上で、この曲を歌いきり、およそ信じられないくらいキラキラに輝くお嬢様を。
 観客からの大歓声に、満面の笑顔で手を振るお嬢様を。

以下略 AAS



165:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:40:06.49 ID:1/ZkFkMM0
 随分と騒々しいな。
 会話の内容からして、おそらく――。

 私は、ドアをそっと開けた。

以下略 AAS



166:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:43:02.32 ID:1/ZkFkMM0
 サッとこちらに見せてきた画面を確認する。
 プロジェクトクローネ総勢13名のメンバーそれぞれの予定が示された横使いのスケジュール表は、確かに、お嬢様の午後の空白を示している。

「ご予定が無いのであれば、ちとせさん、こちらにお戻りになるかと思ったのですが……」
「どこか遊びに行ってるのかなー? あ、アーニャちゃんも午後オフだね」
以下略 AAS



167:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:46:13.55 ID:1/ZkFkMM0
「し、失礼します!」
「ひぁっ、し、白雪さんちょっと!?」

 引っかけた靴を履き直す時間すらもどかしい。
 お嬢様の部屋の片付けも、ドアの鍵も、まるで無視してしまうほどに、私は頭が真っ白のまま寮の出入口へと走った。
以下略 AAS



168:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:50:20.52 ID:1/ZkFkMM0
 寮を飛び出し、その先の門へ向かう足が止まった。

 見慣れた黒い定規が――アイツが、門の前に立っている。

「白雪さん、お待ちしていました。どうぞこちらへ」
以下略 AAS



169:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:54:23.39 ID:1/ZkFkMM0
 都心部から黒埼の屋敷へは、車で1時間半ほどかかる。
 幹線道路を使えば、近くまでは比較的一本道で行けるが、その先は細い山道を慎重に上る必要がある。
 346プロの寮に越してからも、お嬢様と二人でタクシーを利用して帰ることは何度かあったが、どの運転手もその道を嫌がっていた。

 車の中は、しばらく無言だった。
以下略 AAS



170:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:57:18.10 ID:1/ZkFkMM0
「レッスンのことであれば、気に病む必要はありません」

 嫌味も抑揚もまったく感じられないトーンのまま、コイツは続ける。

「もちろん、望ましいことではありませんが……
以下略 AAS



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