152:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:56:51.91 ID:1/ZkFkMM0
「ちとせは、千夜のようになりたいって思ったの?」
「私、ワガママだったみたい。
欲しい物なんて無かったのに、叶う事なら自分の思うように生きたいと思ったの。
あの子が見たものを、私も見てみたい。ライブで得られる信じられない力、私も感じたいし、千夜ちゃんにも勝ちたいの。
153:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:59:06.74 ID:1/ZkFkMM0
――――。
私のステージが、事の発端だったというのか。
常務の過度な期待があったとはいえ、その身を削ってでもステージに立つのだという決意をお嬢様がされたのは――。
154:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:02:03.85 ID:1/ZkFkMM0
* * *
「レッスンをサボってまで話をしたいっていうから、何事かと思ったけど、そういう話ね」
昼下がり、346プロ内にあるカフェで、ため息が一つ生まれて消える。
155:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:04:24.75 ID:1/ZkFkMM0
「その辺は杏には分かんないけど、まぁいいんじゃない?
でも、プロデューサーにはちゃんと自分から言った方がいいよ」
「それは、言われるまでもありません」
「はいはい」
156:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:08:03.77 ID:1/ZkFkMM0
「辞めようと思えばいつでも辞められるからね」
素知らぬ顔で彼女は答えた。
ストローから口を離し、椅子の上であぐらを半分かいて店の天井を仰いでいる。
定規のアイツとはまるで正反対だ。
157:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:10:57.76 ID:1/ZkFkMM0
「どういうことですか?」
「だって、アイドルとしての得難き経験とやらをちとせが欲してるなら、アイドル辞めるわけないでしょ。
目標としていた千夜が辞めて、多少モチベーションが下がるくらいはあるかも知れないけど」
――反論すべき点が見つからない。
158:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:12:56.10 ID:1/ZkFkMM0
合理的な思考に、どこか通ずる部分があった。
異なるのは、ポテンシャル――彼女は、近道を可能にするだけの力がある。
私は言われた通りのことしかできず、それでいて客観的な思考を盾にして本音を隠す卑怯者だ。
あの日、一ノ瀬さんが言っていたことが、少し分かってきた気がする。
159:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:14:38.77 ID:1/ZkFkMM0
――彼女は実は、優しい人なのかも知れない。
同族嫌悪などと言ったのは謝るべきだった。
だが――まぁいいか。
あとは、アイツに断りを入れる、その前に――。
160:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:21:25.45 ID:1/ZkFkMM0
普段は昼のレッスンを行う間の寮がこんなに静かだとは、それをすっぽかすまで知らなかった。
すっかり見慣れた部屋の、ドアの前に立つ。
呼び鈴を押しても、電話をしても、やはりと言うべきか、応答は無かった。
161:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:24:50.93 ID:1/ZkFkMM0
お嬢様には失礼だが――電源をつけ、再生ボタンを押した。
「これは……」
301Res/285.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20