16: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2019/12/18(水) 03:18:18.05 ID:IMXWgdCn0
街を散策すると、それなりの賑わいを見せている。白い石が壁となっている建物を主流に、大きな広場まで道沿いに伸びている。その多くは酒場や宿屋、武器や防具を売る店といった、ギルドメンバー向けのものが立ち並んでいた。
横切る人々も、皮の鎧と剣。あるいはローブと杖といった、ギルドメンバーらしき人が多い。ここの住人、という人間は商店にいる店員ぐらいだろうか。
見慣れたとは思えないものの、どこか知っているという感覚が、どうしてもざわつく。いつか、どこかで、自分を知っている人間が、声をかけてきそうな。
17: ◆e6bTV9S.2E[sage saga]
2019/12/18(水) 03:19:14.34 ID:IMXWgdCn0
ここまで。何にも決まってないから未だにふわふわしてるねぇ。
18: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2019/12/22(日) 02:50:32.10 ID:ZitEDe6b0
声をかけてきた相手も、自分の様子に驚いていた表情をしている。
「おっと、どうしたい?」
「いえ、少し考え事を…」
19: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2020/01/02(木) 04:09:15.60 ID:FHy5Fzra0
男の名前はヴェルズというそうだ。各地を放浪しながら腕試しをし、日銭の為に依頼(クエスト)をこなすギルドメンバー。これからこなす魔物討伐の準備の為、薬屋を探していたとのことだ。
「ふーん、記憶がないねぇ」
「えぇ、まったく」
20: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2020/01/02(木) 11:06:06.11 ID:FHy5Fzra0
「ありがとよ。おっと、あんたの名前聞いてなかったな」
「ナシノ…、ナシノといいます」
「あいよ。ナシノ、またどっかであったらよろしく頼むわ」
21: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2020/01/02(木) 13:32:35.38 ID:FHy5Fzra0
「貴方、お店の前で突っ立っているのは、あまりよろしくないわね」
「あ、すいません」
お店から出てきた女性にそう声をかけられて、慌てて店から少し離れる。自分で思ってるより、長くその場にいたのかもしれない。ちゃんと女性に挨拶もできないまま、逃げるようにその場を離れようとした。
22: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2020/01/02(木) 14:00:02.85 ID:FHy5Fzra0
「貴方、ギルドメンバーよね? 魔法の適性は?」
「火の属性があると言われました」
「……。決めた、ついてきなさい」
23: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2020/01/04(土) 02:48:27.68 ID:kZaYRnnM0
女性。ヘカルテ・サルバートに連れられ、たどり着いたのはギルド協会内にある訓練場。今は、貸し切りの状態になっている。
「ナシノ。何でもいいわ、その適正があったと言われた火を発現しなさい」
「は、はい」
24: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2020/01/04(土) 03:36:32.57 ID:kZaYRnnM0
「火は熱い。基本的な認識があると言っても、記憶を失ったことで反射的な認識はあるものなのに…、その火は熱くない。そうね?」
前半は呟くように吐き出し、後半はナシノに再度問いかける。改めてナシノは頷いて答えた。
「発現させるだけなら、誰でも出来る。でも、発現させたものを改変させるのは、才か常識外れか。その意味で貴方はどちらかはまだ不確定な訳だけど」
25: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2020/01/10(金) 03:55:59.18 ID:1Azkb+300
一息ついて、借りた部屋のベッドに横になる。軋む音とそれなりの肌触りのシーツが、安物であると感じさせる。利用して二日目で、その感触にまだ慣れないが、1人でいられる空間は、今のナシノにとってはありがたかった。
ヘカルテ、彼女の素性は彼女自身から簡単に聞かされた。ギルド協会の臨時教官で、ここへ赴任したばかりとのことだ。それ以外は、何も言う気はなさそうに去っていったので、質問する余地もなく、育てさせろということに対して、彼女はナシノの返答も聞いていない。
あの常に怒っているような目つきで、美人さも相まってそれが鋭い刃物のような視線を感じさせる。髪は耳が出る程度に短く、身長はこの世界で恐らく平均よりやや高いぐらい。服装はローブに杖ではなく、ロングスカートに白いブラウスのようなもので、シンプルな装いだった。
33Res/21.22 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20