110: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/12(土) 23:13:36.52 ID:L3t7G6Qz0
私はそれから交戦規定や契約書類、または過去の戦闘記録などをどっさりと渡された。まだ体は本調子ではない。海は出られるが、連携の訓練などもしていないのに、すぐ任務に就けとは後藤田提督も言わない。
少なくとも精密検査が済むまでは彼ら、CSAR「浜松泊地」のルールや戦術を学ぶことこそが、私にできる精一杯の努力だろう。
それから三時間後、帰還した五人はひとりの救助者を担ぎ上げていたが、彼女たちの顔は重苦しかった。
111: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/12(土) 23:14:18.85 ID:L3t7G6Qz0
――――――――――――
ここまで
112:名無しNIPPER[sage]
2019/10/13(日) 13:18:13.58 ID:jFScMsXso
乙
113: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:33:40.58 ID:UFSxYV+50
誰一人として泣いていなかった。泣いてなぞいなかった。
泣いていないだけではあった。
私はCTスキャンの中でじっとしながら、最近はことあるごとにあの日の、あのときのことばかり考えているような気がして、身震いをする。秋の早朝のような寒気が体の内と外を取り巻いている。
114: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:35:40.68 ID:UFSxYV+50
後藤田提督は私が怒っているのだと言った。その表現は腑に落ちて、もし真実だとするのならば、きっと私は諦めが悪いのだろう。諦めの全てを姉さまに吸い取られてしまったのだろう。だからこうも怒れる。
この世に蔓延る不幸の数々に我慢がならない。
大丈夫ですか? どこか痛みますか? 看護師が私の顔を見て、心配そうに言った。無意識のうちに顔を顰めてしまっていたかもしれない。かぶりを振って、大丈夫ですと答える。
115: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:37:27.34 ID:UFSxYV+50
「窮屈だったわ。身動きもあまりとれなかったから」
「そうですか。体の調子はどうです? 生活に支障なくとも、本調子ではないですか?」
116: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:39:47.43 ID:UFSxYV+50
「買い物は最後にするわ。重たい荷物を持っての移動は避けたいし」
そもそも、物欲は少ない方だ。幼少のころから欲しいものが手に入ることは稀だった。私も姉さまも、暇を紛らわすのはもっぱらふたり遊びで。
と、ぐうぅ、大淀の腹が鳴った。盛大に。
117: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:46:28.23 ID:UFSxYV+50
「なら話が早い。国村一佐はガチガチの現場主義者ではありますが、かといって彼の独断専行を許さない派閥も確かに存在しています。空軍に手を借りるなんてもってのほかだ、なんて輩も。
そこで私の出番というわけです。艦娘という存在が、決して海軍の手から離れないように、空軍の手に渡らないように、目を見張らせろと……眼鏡を光らせろと」
くふ、と大淀はまたも笑う。
118: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:47:25.87 ID:UFSxYV+50
「上層部に与したところで給料がちょろっと上がるだけじゃないですか。特別褒賞が出て、徽章を貰って? はっ! ばからしい。いらねーって話ですよ。いや、落ちてる金は拾う主義ですけどね。
いいじゃないですか、CSAR。私はその理念に、主義主張に、ひどく共感を覚えています。後藤田提督は一癖以上あるとはいえ有能です。派閥争いでぽしゃらせるには、少しばかり惜しさが勝る」
「裏切ったということ?」
119: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:58:01.64 ID:UFSxYV+50
大淀が肉を一口大に切っていく。ちょうどいいミディアムレア。薄く桃色の内部からは、切ったそばから肉汁が溢れ、照明を反射しててらてら光っている。
フォークでそのうち一つを刺して、口へと運んだ。そのまままるっと一口で。
「それに、思いませんか?」
120: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:59:52.93 ID:UFSxYV+50
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ここまで
長らく付き合ってくださっている方々はご存知かもしれませんが、設定厨なので、
こういうだらだら設定を開陳しているだけの話が好きです。
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