113: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/14(月) 21:33:40.58 ID:UFSxYV+50
誰一人として泣いていなかった。泣いてなぞいなかった。
泣いていないだけではあった。
私はCTスキャンの中でじっとしながら、最近はことあるごとにあの日の、あのときのことばかり考えているような気がして、身震いをする。秋の早朝のような寒気が体の内と外を取り巻いている。
そういうものだ、と知った口を利くのは簡単だった。大罪でもあった。
世の中に不幸は蔓延っていて、成せずに潰えた成すべきことのなんと多いことか。そんならしくもないことを考えるたびに脳裏によぎる光景――前へ前へと進むたびに一層強く吹き付ける北風。岸まで押し戻そうとする海流。
知った口を利こう。そういうものだと。
CSARはそういうものだし、私の人生はそういうものだし、そもそも全てにおいてそういうものだ。
だから麻痺する。慣れる。いつしか涙は出なくなり、へいちゃらな顔をしてその脚で映画だって見に行ける。「真実の愛」をCMで連呼していたフランス映画。きっとあの恋人たちも、いつかは別れる。
怒り。
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