春を売る、そして恋を知る
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2:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:04:15.22 ID:jc7g5yNHO
男を部屋から送り、しばらくするとオーナーが部屋にやって来た。

四十路を超えているはずなのに、見た目はそれよりも十は若い。すらっと伸びた手足にグレーのスーツが様になっている。テレビに映れば、俳優と思われても不思議ではない。

「お疲れ様、まどか。今日もいい仕事だったらしいね」
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:11:40.62 ID:jc7g5yNHO
「つれないなぁ、せっかくの家族団らんでもと思ったんだけど」

拗ねた振りで、彼は舌打ちして見せた。

私には父親がいない。いないというより、誰か分からないということが正しいのかもしれない。私と同じ仕事をしていた母親は、誰の子かもしれぬ私を孕んでしまった。父親が分からないままに私はこの世に生まれてきて、そしてそれからずっと、このビルで育ってきた。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:20:07.78 ID:jc7g5yNHO
「まどかの好きな、チーズタルトを用意したんだ。良かったら、お茶でもしないかい?」

時計の針が指さすのは日付の変更後だというのに、この時間にそんな提案をしてくるなんて。抜け目ないようで、こういうちょっと不思議な面がある。

だから私は彼を憎めない。憎めきれない。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage]
2019/08/18(日) 23:22:42.17 ID:ARHfS1OQo
きたい


6:名無しNIPPER[sage]
2019/08/18(日) 23:25:29.51 ID:HhbFP5PHO
きたい その2


7:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:31:41.12 ID:jc7g5yNHO
タルトを食べ終えると、彼はそれが当然のように私をベッドに誘った。その日一番の『仕事』をしたと評価した子を、一日の最後に彼は抱く。

これが『家族団らん』なんて、鼻で笑ってしまう。

ユズさんはこの行為を心待ちにしていると言っていたけれど、私はどうしても好きになれなかった。私に本当の家族はいないと、改めて伝えられているようで。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:55:51.96 ID:Q++LUeiVO
昨日の最後の仕事のせいか、翌朝は目が覚めるのが遅かった。既に時計の針は11時を回っていて、太陽の光が布団から出るように急かしてくる。

欠伸をしながら身支度をしていると、ドアホンが鳴った。ユズさんが「おはよう、お姫様」とモニター越しに挨拶をしていて、それを確認した私はドアを開場して彼女を招き入れた。

「おはよう、ユズさん」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 00:06:09.97 ID:wMUcUiBSO
彼女が甲斐甲斐しく食事の準備をしてくれている間に、私もメイクを終了させた。よし、と満足をしてメイクボックスの箱を閉じると、ユズさんから「ナイスタイミング!」と声をかけられた。

「さ、食べましょ」

今日のサンドイッチはたまごサンドとBLTという定番のものだった。私たちの部屋にはそれぞれキッチンも備えられているけれど、自炊をしている人たちがどれほどいるのかは分からない。私だって、ユズさんがこうしてお茶を淹れてくれる以外にはキッチンを使ったことがない。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 00:12:35.11 ID:wMUcUiBSO
ひとしきりそれをやってしまうと、満足したのか「そうじゃなくて!」と話を転換させる。

「私たちだよ? 麗しい美女だよ? なのに恋の話の一つや二つ……あっても良いじゃない」

「ユズさんはオーナーのこと、好きなんでしょ?」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 00:19:52.33 ID:wMUcUiBSO
「オーナーとは違うの?」

「オーナーには何ていうか……好きだけど辛い、でもやめられない! っていう感じかな。ほら、太るって分かってても夜中に甘いもの食べたくなっちゃう感じっていうか」

昨夜を思い出すような喩えに少し焦りつつも、それには納得してしまった。ダメだと分かったうえで、それでもやめられないらしい。とはいえ、それを人に対して抱くことが恋愛感情であるというのなら、やはり私にはそれが欠けているらしい。
以下略 AAS



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