春を売る、そして恋を知る
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2:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:04:15.22 ID:jc7g5yNHO
男を部屋から送り、しばらくするとオーナーが部屋にやって来た。

四十路を超えているはずなのに、見た目はそれよりも十は若い。すらっと伸びた手足にグレーのスーツが様になっている。テレビに映れば、俳優と思われても不思議ではない。

「お疲れ様、まどか。今日もいい仕事だったらしいね」

満足気に私かけた声色は、出来のいい娘に話しかけるものなのか、それともよく躾けられたペットに向けたものなのか分からない。

返事をしない私に「反抗期なのかなぁ」とわざとらしく肩をすくめて見せた。

生まれた時から彼の下で過ごしているが、私は彼の名前も知らない。このビルの支配人であること、表向きの顔は実業家であること、そしてろくでもない人間であるということ。それ以上のことを私は知らない。名前すら。

彼は私の名前を知っているのに、決して名前を呼ぼうとはしない。『まどか』と彼が付けた名前で、まるで所有物であることを言い聞かせるかのように呼び続ける。

「何か用?」


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