春を売る、そして恋を知る
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7:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:31:41.12 ID:jc7g5yNHO
タルトを食べ終えると、彼はそれが当然のように私をベッドに誘った。その日一番の『仕事』をしたと評価した子を、一日の最後に彼は抱く。

これが『家族団らん』なんて、鼻で笑ってしまう。

ユズさんはこの行為を心待ちにしていると言っていたけれど、私はどうしても好きになれなかった。私に本当の家族はいないと、改めて伝えられているようで。

オーナーの行為はいつも決まった流れで、それを守っていれば乱暴に扱われることも、不機嫌になることもない。まるで仕事のルーティーンであるかのように、彼は私を抱く。

愛情は無い。それでも、私はそれを拒むことができない。

彼に不必要だと判断されたら、私はどこに行けばいいのだろう。学校に通ったことはなかったから、同世代の知り合いなんて一人もいない。私が知っていると言えるのは、オーナーと、私と似たような境遇だったユズさんだけだ。二人ともこのビルの住人で、外のことなんて何もない。

虚しくなるだけの行為であっても、私は彼に求められるために抱かれる。そのために生きている。

薄皮越しに、彼が満足したのを感じた。


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