春を売る、そして恋を知る
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4:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:20:07.78 ID:jc7g5yNHO
「まどかの好きな、チーズタルトを用意したんだ。良かったら、お茶でもしないかい?」

時計の針が指さすのは日付の変更後だというのに、この時間にそんな提案をしてくるなんて。抜け目ないようで、こういうちょっと不思議な面がある。

だから私は彼を憎めない。憎めきれない。

「……いいよ」

私をこの部屋に閉じ込めた男と家族であるということに。母親の跡を継がせると決めた男と一緒に暮らしているということに。

全てのことが赦せない。

その筈なのに、受け容れてしまっている自分が、抗おうとしない自分が、一番赦せない。

外の世界に焦がれることが無駄だと分かっていて、最初から何もしていないことを自分が一番理解している。それなのに、オーナーのせいにするのが一番楽だから、私はオーナーを憎むことで自分への苛立ちを今日も誤魔化す。

……それでも、悔しいことにチーズタルトは絶品だったわけだけど。



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