76: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:30:18.26 ID:BON9hvjh0
□ ―― □ ―― □
77: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:30:58.88 ID:BON9hvjh0
その間俺は何をしていたかって言うと、ずっと“半人前”のプロデューサーだった。なにせ“持たざる者”ってのは変わらなかったから。
だから後から入ってきたプロデューサーに頭を下げて、そしてこれでもかっていろんなことを教わった。それが俺の“持てる限り”だと思ったから。
本好きで超過労働がちなプロデューサーからは様々な知識を。
78: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:31:25.51 ID:BON9hvjh0
そうそう、事務員で思い出した。俺が夢を目指すきっかけとなったあの動画のアイドルは、なんと正直者なプロデューサーが手掛けたアイドルだったのだ。
「へえ、なんだか嬉しいな。こんなに優秀なプロデューサーが生まれるきっかけだなんて……あの時俺たちのやってたことは間違いじゃなかったんだなぁ。ねえ、ちひろさん?」
しかもそのアイドルが引退後、事務員としてシンデレラガールズにやってきたのだから俺の興奮はすごかった。その時に向けられた渋谷さんからの冷たい視線で素に戻ったのは、今となると笑い話だ。
79: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:31:52.65 ID:BON9hvjh0
「――あっ、プロデューサー。ここに居たんだ」
そんな感傷に浸る俺へ、掛けられる凛とした声。それに気づいて、俺は立ち上がる。そこに居たのは、あのトロフィーを持った、ドレス姿の渋谷さんの姿。
『渋谷さん、おめでとう。凄く綺麗だった』
80: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:33:00.13 ID:BON9hvjh0
「“これ以上、俺が重荷になるわけには行かない”……なんて、考えているんでしょ、プロデューサー?」
どくん、と心臓が跳ねた。考えていたことをピタリ、と言い当てられたのだから当然だろうけれども。見やれば、少し不機嫌そうな渋谷さんの顔。
「あのさ、プロデューサー。私がここまでこれたのはプロデューサーがいたからだよ。なのに重荷なんてはず、ないじゃん」
81: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:33:27.61 ID:BON9hvjh0
「夢なんかじゃないよ。夢なんかじゃ」
そして、渋谷さんは思い出したように、
「……そうだ、プロデューサー。あの約束、覚えてる?」
82: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:34:09.89 ID:BON9hvjh0
「“凛”……って、そう呼んでほしいな。いつまでも“渋谷さん”なんて、他人行儀だから」
そんな、些細なお願い。思わず目を丸くする。そう言えば、確かに渋谷さんのことをそう呼んだことはない。ほかのプロデューサーは下の名前で呼んでいる人もいるのに。
『そんなのでいいのか?』
83: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:34:36.50 ID:BON9hvjh0
「プロデューサーは自分のことを“半人前”って言うけどさ」
『うん』
「私だって、何も知らなかった私から、ようやく“半人前”のアイドルにはなれたと思ってるんだ」
84: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:37:27.36 ID:BON9hvjh0
今回の更新で、この作品は完結となります。
またシリーズと言えるかどうかは分かりませんが、七人目の正直から始まった一連の作品群もこれで終わりです。
構想してから都合六年でようやく終わることが出来ました。
読んでいただけた方々には感謝しかありません。ありがとうございました。
85:名無しNIPPER[sage]
2019/08/18(日) 20:15:30.26 ID:HemI3qE0o
お疲れ様でした
四面楚歌から知ってシリーズ全部読んだよ
しかし強そうなCoプロだ…
86:名無しNIPPER[sage]
2019/08/18(日) 21:03:54.21 ID:TcQpB08bO
お疲れ様でした。
最後の1人は予想がついてたけどやっぱり作品で見たいし、また更新してくれて嬉しかったです。
3年待ったけど待ってて良かった、ありがとうございます。
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