79: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:31:52.65 ID:BON9hvjh0
「――あっ、プロデューサー。ここに居たんだ」
そんな感傷に浸る俺へ、掛けられる凛とした声。それに気づいて、俺は立ち上がる。そこに居たのは、あのトロフィーを持った、ドレス姿の渋谷さんの姿。
『渋谷さん、おめでとう。凄く綺麗だった』
「相変わらず、褒め言葉ばかりは一人前なんだから」
『はは、すっかり俺も、渋谷さんの尻に敷かれちゃったからね』
「もう……」
呆れたように、けれどはにかむ彼女の姿は、とても魅力的だった。こんなかわいくて、綺麗なアイドルが俺の担当だなんて、今でも夢みたいだと思う。
結局、この三年間で彼女にしてあげられたことなんて、どこまで行っても“半人前”だった俺には片手で足りるほどでしかなかった。
それでも渋谷さんは俺を信じてついてきてくれた。もうすっかり“一人前”に見える彼女が、ずっと。だから俺は思っていた。
もう十分すぎるくらい、彼女に夢を見せてもらった。俺の人生を、こんなにも変えてくれた。彼女に頂上の景色を見せてもらった。これ以上――。
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