76: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:30:18.26 ID:BON9hvjh0
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まばゆいばかりの舞台で、彼女が照らし出されている。そして掲げられる、一つのトロフィー。それは、その年一番活躍したアイドルへと捧げられる最高の栄誉を示すモノ。
それを、愛おしそうに受け取りはにかむ彼女の姿。初めて会ったときよりも幾分柔らかく、しかしその徹底的なまでのひたむきさはついぞ、変わることのなかった勇姿で。
……ほんの数時間前に見たそれは、瞼を閉じると今でもありありと思い浮かぶ。
『……本当に、トップアイドルになっちゃったな』
俺は巨大なホールの楽屋に座り、ぽつりと呟いた。もちろんそれは喜ばしいし、誇らしい事だ。なにせ担当アイドルが、名実ともにトップアイドルとなったのだから。
それもシンデレラガールズ・プロダクションと名付けられた、立ち上げて三年の新興プロダクション初の快挙。社長の喜びようは半端なかったし、他のプロデューサーたちは俺を揉みくしゃにして祝ってくれた。
だからこそ思う。これは夢なんじゃないか、と。ふとした拍子に目を覚ませば、俺は田舎に居て、家業を継いでいるただの一般人なんじゃないか。そんな思いが消えない。
俺と、社長と、そして渋谷さんと始まった小さなプロダクションは、僅か三年で押しも押されもせぬ巨大プロダクションになった。
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