77: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:30:58.88 ID:BON9hvjh0
その間俺は何をしていたかって言うと、ずっと“半人前”のプロデューサーだった。なにせ“持たざる者”ってのは変わらなかったから。
だから後から入ってきたプロデューサーに頭を下げて、そしてこれでもかっていろんなことを教わった。それが俺の“持てる限り”だと思ったから。
本好きで超過労働がちなプロデューサーからは様々な知識を。
愛嬌のある冷徹怜悧なプロデューサーからは効率的な業務のコツを。
お調子者な遊び人のプロデューサーからは息抜きのやり方を。
天才肌のプロデューサーからは人を信じることの大切さを。
いつも誰かを手助けしているプロデューサーからは直感の重要さを。
とんでもなく正直者なプロデューサーには決して夢を諦めない執念を。
それらを十全に吸収できたかどうかは怪しいけれども。それでも、何一つ嫌がることなく彼らが教えてくれなければ、きっと今の俺の立場はなかった。彼らのおかげでこのプロダクションは大きくなったのだから当然だろう。それは間違いなく言い切ってもいい。
……まあ、流石にプロダクションのビルが竣工するまで、受付がてらいろいろな業務を押し付けられるとは思わなかったけれども。それもエントランスホールが仕事場だったから笑える絵面だったに違いない。
でもそのおかげで、彼らと話をする機会が増えたのだから社長の慧眼には感謝しかない。もっとも事務員を雇うまでの繋ぎだ、なんて社長は言っていたけれども。
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