【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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264: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:33:40.24 ID:Bg3Eqo0s0

『夢でもいい 叶えてよ』

でも、きっと本当は分かっていた。
このままの自分だと、大切な人が見つけてくれた自分を、誇りに思えない。
以下略 AAS



265: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:35:55.72 ID:Bg3Eqo0s0

このみの歌声だけを残して、すべての音が消えた。
舞台を彩る照明も、気づけばたった一つだけになっていた。
舞台の真上にある、スポットライトだけがこのみを照らしていた。

以下略 AAS



266: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:38:08.46 ID:Bg3Eqo0s0

劇場の客席から、このみを見つめる目線が、いくつもあった。

20代後半くらいの、リストバンドを手首に一つだけ付けた、若い男がいた。
男はペンライトを胸の前で握ったままで、舞台に立つこのみをじっと見ていた。
以下略 AAS



267: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:39:19.08 ID:Bg3Eqo0s0

このみは、ゆっくりと目を閉じた。
胸に置いた手のひらを通じて、どきどきと鼓動が高鳴るのがわかった。
そして、このみはそっと目を開いて、前を見た。

以下略 AAS



268: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:39:46.77 ID:Bg3Eqo0s0

ある時、息を吸う音がした。
止まっていた時間が、もう一度動き出した。

『love song のようにきらめき
以下略 AAS



269: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:44:12.68 ID:Bg3Eqo0s0

これが、最後のサビ。
この暖かな世界も、もうすぐ終わってしまう。
……でも、大丈夫。
貴方にこの想いを伝えられたから。
以下略 AAS



270: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:44:44.93 ID:Bg3Eqo0s0

「──もう行かなくちゃ。本当の姿を知られてしまったら、私はもう此処には居られないの。」

暗がりの舞台の上で、たった一つのスポットライトに照らされて、このみは呟くように言った。
あの音と光の溢れた世界は、もうここにはなかった。
以下略 AAS



271: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:45:38.78 ID:Bg3Eqo0s0

吹いていた冷たい風は、もう止んでいた。
このみは上手側へ、ゆっくりと歩き出した。
白く染まった地面を歩くたびに、雪を踏む音が響いた。

以下略 AAS



272: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:46:11.92 ID:Bg3Eqo0s0

気が付けば、音が、声が聞こえていた。
割れそうなほど大きな、たくさんの声が、客席から聞こえてきた。
このみは、前を向いたままだった。
しかし、それが自分を見守ってくれた人たちの声だと、確かに分かった。
以下略 AAS



273: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:46:43.90 ID:Bg3Eqo0s0

ステージの上に照明が一斉に灯るのを、このみは薄暗がりの舞台袖からただ見ていた。
そこには、このみ以外の、大勢の劇場のアイドルたちが立っていた。

このみのソロ──最終ブロックの最後の曲──を終え、この公演も終わりが近づいていた。
以下略 AAS



274: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:47:11.77 ID:Bg3Eqo0s0

スタッフからマイクの取り外しが終わった旨の報告を受けて、このみの意識は舞台袖に戻ってきた。
このみはお礼を言い、彼女と別れた。
その場でふと辺りを見回すと、このみのプロデューサーがすぐそばにいた。
顔を見れば、彼は敢えて声をかけないでいてくれたんだと、このみには分かった。
以下略 AAS



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