265: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:35:55.72 ID:Bg3Eqo0s0
このみの歌声だけを残して、すべての音が消えた。
舞台を彩る照明も、気づけばたった一つだけになっていた。
舞台の真上にある、スポットライトだけがこのみを照らしていた。
辺りに降り積もった雪に吸い込まれてしまったみたいに、静かだった。
誰もが、舞台上のこのみと自分の二人だけを残して、時間が止まったように感じた。
「……ねぇ、聞いてくれる?」
音のない世界の中で、このみは大切な人に語り掛けるように言った。
その瞳は微かに潤んでいて、慈しみと優しさに溢れていた。
このみは、両手を胸に当てた。
「あの雪の日──。あなたと最初に出逢った日のこと、私は今でも昨日のことみたいに覚えてる。」
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