270: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:44:44.93 ID:Bg3Eqo0s0
「──もう行かなくちゃ。本当の姿を知られてしまったら、私はもう此処には居られないの。」
暗がりの舞台の上で、たった一つのスポットライトに照らされて、このみは呟くように言った。
あの音と光の溢れた世界は、もうここにはなかった。
このみは目を瞑って、胸に手を当てた。
それから、手をぎゅっと握って、前を向いた。
このみの目の先には、大切な人たちが居た。
「でも。この気持ちを貴方に伝えられて……本当に良かった。」
その目は、優しかった。
愛しさも、寂しさも、切なさも……全部湛えて、その瞳は濡れていた。
「ずっと言えなくて、ごめんなさい。……今まで、ありがとう。」
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