【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
1- 20
205: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:24:16.97 ID:9DhA16vx0

彼がいくら手で拭っても、涙は止まらなかった。
このみは、自分の手の中にあった彼のハンカチを見た。
しかし、そのハンカチはもうこのみの涙で濡れてしまっていた。
このみは、横に置いてあった自分の鞄に手を差し入れて、そこから一枚のタオル地のハンカチを取り出した。
以下略 AAS



206: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:24:56.73 ID:9DhA16vx0

それから、幾ばくかの時間が過ぎた。
彼は時折、深く息を吸ってみたり、目をぎゅっと瞑ったりしていた。
しばらくしてから、彼は顔を上げ、ゆっくりした調子で言った。

以下略 AAS



207: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:25:22.73 ID:9DhA16vx0

二人が気が付けば、時計の針は21時を過ぎていた。
グラスの中の氷も、すっかり全部溶けてしまっていた。
あまり遅くなると、翌日の仕事にも響くかもしれないと、二人は帰り支度を始めることにした。
彼は台拭きを取ってきて、テーブルを拭き始めた。
以下略 AAS



208: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:26:20.70 ID:9DhA16vx0

二人分のグラスを持って、扉の横にある給湯スペースに向かった。
ところが、少しだけ歩いたところでこのみはそっと足を止めた。
少しの間が空いてから、その場で振り返って、このみは訊く。

以下略 AAS



209: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:28:22.19 ID:9DhA16vx0

本心を隠すようにイジワルっぽく笑って、このみはそう言った。
その問いに、彼はすぐには答えなかった。
こめかみのあたりを指で掻いて、少しの間考えて。
それから、このみを優しく見つめて、答えた。
以下略 AAS



210: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:31:16.57 ID:9DhA16vx0

このみは、いつか来るかもしれない、そんな何年後かの未来を思い浮かべた。
今より歳を重ねた自分が、仮に女優の道を歩んでいたとして──あるいはそうでなかったとしても。
やっぱり、私はこの場所に来てしまうんだと思う。
そこには今より大きく、大人になった仲間たちが居て。
以下略 AAS



211: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/06(土) 21:17:28.19 ID:3DhfCsSR0

「着きましたよ、このみさん。」

彼は、ハンドブレーキをかけながら、助手席に座るこのみに声をかけた。

以下略 AAS



212: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/06(土) 21:22:46.44 ID:3DhfCsSR0

二人は、オーディションが行われる会場近くのコインパーキングにいた。
彼が運転席側のドアノブに触れると、電子音と共に鍵が閉まる音がした。
それを確認して、二人は歩き出した。

以下略 AAS



213: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/06(土) 21:23:26.15 ID:3DhfCsSR0

二人は車を止めたパーキングから通りへ出た。
そこには背の高いビルがいくつもと並んでいて、通りには車がひっきりなしに走っていた。
そのままこのみが彼についていくと、しばらく通り沿いを歩いたところで、灰色っぽい建物が見えてきた。
その建物こそが、今回の舞台の企画・制作会社の本社の入るビルであり、オーディションの会場なのだ。
以下略 AAS



214: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/06(土) 21:24:43.30 ID:3DhfCsSR0

二人が9階で受付を済ませたあと、会場として指定されていた11階にエレベーターで向かった。
このみたちがエレベーターから降りると、ちょうど廊下の方からスーツ姿の男二人が話をしながらこちらに向かってきていた。
一人は50代ごろのやや落ち着いた老練そうな雰囲気のある男で、眼鏡をかけていた。
下顎から頬にかけて伸びる髭は綺麗に整えられていて、男の几帳面さが伺えた。
以下略 AAS



215: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/06(土) 21:25:20.21 ID:3DhfCsSR0

今までに面識こそなかったものの、このみはこの二人のことをよく知っている。
二人の名前は、今回の演劇のオーディション資料の中で、何度も見た。
この二人こそが、『鶴』の物語を手掛ける舞台監督と演出家だ。
髭を生やした男は舞台監督として、過去多くの舞台に関わって来た、いわば大ベテランだ。
以下略 AAS



321Res/210.41 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice