209: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:28:22.19 ID:9DhA16vx0
本心を隠すようにイジワルっぽく笑って、このみはそう言った。
その問いに、彼はすぐには答えなかった。
こめかみのあたりを指で掻いて、少しの間考えて。
それから、このみを優しく見つめて、答えた。
「今までも、演技の仕事は何回もありましたけど……。やっぱり、きっと素敵な女優さんになるんでしょうね。
このみさんがそう願うのなら……。いつかきっと、大勢の人の胸の中にいつまでも残るような、そんなお芝居ができると俺は思っています。ただ……。」
彼はそこまで言ったところで、言葉を飲み込んだ。
どこか、その表情はもの悲しげにも見えた。
しかし次の瞬間には、彼の顔からその色は消えていた。
彼はもう一度このみの方を見て、言葉を続けた。
「……ただ、もしこのみさんが女優の道を進むことになっても。
例えこの劇場から離れて、本格的に演技のお仕事ができる他の事務所へ移ることになったとしても……。
……この場所は、変わらず此処にありますから。
だから、気が向いたときにいつでも遊びに来て、それでまたみんなと色んなお話をしましょう。」
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