【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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205: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:24:16.97 ID:9DhA16vx0

彼がいくら手で拭っても、涙は止まらなかった。
このみは、自分の手の中にあった彼のハンカチを見た。
しかし、そのハンカチはもうこのみの涙で濡れてしまっていた。
このみは、横に置いてあった自分の鞄に手を差し入れて、そこから一枚のタオル地のハンカチを取り出した。

「……はい、プロデューサー。私のを使って。」

「うう、すみません、このみさん……。」

彼は左手でハンカチを受け取って、そのまま涙を拭いた。
そんな彼の様子を見て、なんだか子どもみたい、とこのみは顔を綻ばせた。

静かな夜、二人の潤んだ声だけが部屋の中を包んでいた。
少し気恥ずかしくもあり、そして不思議と心地が良い、そんなひととき。
いつまでもこの時が続いたのなら──このみは湧き上がる気持ちを胸にひそめて、そっと微笑んだ。


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