63: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:51:55.02 ID:9pdDfgPfo
結局のところ、エミリーは頭を打って記憶喪失になってしまったのだ。
ただし彼女が失ったのはほんの一部の特定の記憶──つまり日本語の言語知識だった。
これについて、俺たちはエミリーが幼い頃に使っていた昔の教材を用意した。
64: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:52:40.95 ID:9pdDfgPfo
「確かにエミリーが子供の頃の話を忘れてしまってることは確かなんだ。
だから思い出させるために何とかやってみる価値はある、ってとこまでは理解してもらった」
「じゃあ、何でそれを試す前に帰らせるのよ?」
「肝心なその子についての情報が全くないから。 どうやってエミリーに思い出させるかのアテが何もないせいだよ」
65: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:54:18.32 ID:9pdDfgPfo
*
翌日、朝一番で事務所にやってきた伊織は俺を見るなり言った。
66: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:55:23.14 ID:9pdDfgPfo
「……伊織」
「何?」
俺はここ最近の伊織に対してずっと抱き続けていた疑問を、思い切って投げかけてみた。
67: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:56:18.41 ID:9pdDfgPfo
「伊織……」
じっと動かない彼女に、やめてくれとだけ伝えた。今度は俺の目を見つめて返事を待っているようだった。
ここまでされてしまえば、流石にこちらが折れるしかないようだ。
68: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:57:17.32 ID:9pdDfgPfo
──────
ヒースロー空港から地下鉄で一時間ほどの場所にある、ロンドン北部の高級住宅街──エミリーの実家はその一角にある。
69: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:59:09.29 ID:9pdDfgPfo
用意してくれた客間へキャリーバッグを置き去りにし、居間でお母様と話をしていく。
エミリーは長旅で疲れたのか、自室で少し休むといって鍵を閉めてしまったのでそっとしておいた。
「《私も夫も、今回のことは本当に残念に思います》」
70: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:59:53.13 ID:9pdDfgPfo
「《何日か一緒に遊んだりしたんですけど、
エミリーったらいつの間にかすっかりその子に懐いちゃって……帰国するときにお別れを言うのが大変でした》」
「《初めて会ったのは、エミリーのお父様が仕事のお付き合いで日本人の客を招いてパーティーを催されたときですよね?》」
「《そういえばそうだったような……よくご存じですね?》」
71: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:01:24.91 ID:9pdDfgPfo
*
「──思ったより早く届いたのね」
「《せっかく送ったのに、こんなに早く帰ってくるなんてね……》」
72: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:02:33.24 ID:9pdDfgPfo
その後エミリーの自室にお邪魔して二人で部屋の整理を手伝っていると、エミリーは私に訊いてきた。
「《どうして、こんなところまで私と一緒に来たんですか?》」
「《お父様が仕事の都合で付き添いが難しくなったからよ》」
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