65: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:54:18.32 ID:9pdDfgPfo
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翌日、朝一番で事務所にやってきた伊織は俺を見るなり言った。
「昨日、エミリーのお父様と話をしたの」
「何だって?」
反射的に声を上げてしまう。
「説得しに言ったのよ、最後にチャンスをくれないかって」
「……だからどう言ってもダメだったんだって。 エミリーを帰らせることはもう決まっちゃったんだ」
「ええ、それについては私も賛成よ。 ただ、私が連れて行くことになった」
「えっ、何で……」
「エミリーがその日本人と出会ったのが、あの子のご実家でのことだからよ。 だから向こうで過ごせば、思い出すきっかけがまた増えるってこと」
「それ……お父様から聞いたのか?」
伊織は少し濁すように「まあ一応」とだけ答えた。
「だから、しばらく休みをもらいたいの。 エミリーと一緒にロンドンへ行って──その後は、どうなるか分からないけど」
あまりに急な話に理解が追いつかない。
「まず……一体どうやったんだよ? 何を言ったんだ? あれだけ俺たちが頼んでも折れなかったのに……どうして」
「どうだっていいでしょ。 お父様も仕事の都合でもともとスケジュールが厳しかったみたいだし、話し合って私がちょうどいいってことになったの」
「ちょうどいいって……何が」
「うるさい、とにかく決まったことなの。 ざっと10日くらいは大きな仕事もなかったでしょ?」
理解が追いつかない。が、今回ばかりは「はいそうですか」と、素直にOKを出せないことだけははっきりしている。
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