エミリーが忘れた日
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68: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:57:17.32 ID:9pdDfgPfo
 
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ヒースロー空港から地下鉄で一時間ほどの場所にある、ロンドン北部の高級住宅街──エミリーの実家はその一角にある。

この街に来るのは随分と久しぶりだったから迷ったらどうしようかと心配もしたものの、エミリーが道案内をしてくれてすんなりとここまでやって来れた。
私が付き添いに来ることを最初は驚いていたし、行きの飛行機ではあまり話をしてくれなかったエミリーだけど、
こちらに着いてからは安心感が勝ったのか少しずつ元気を取り戻してくれている。
最後には久しぶりの故郷の景色を楽しむ余裕も出てきたようだった。

霧の都という異名正しく、どんよりした曇り空がこの日も広がっていた。

呼び鈴を鳴らしてしばらく待つと、大きな扉の正面玄関が開かれる。

「Emily...!」

久しぶりの帰宅を一番に出迎えたのは彼女のお母様だった。
両手を広げ娘をそっと抱きしめると、エミリーは少し笑って甘えるように体を預けていた。

「《パパから事情は聞いたわ……大変だったわね》」
「《ううん……平気。 ありがとう》」

やがてお母様がこちらに気づいたので、ペコリとお辞儀をする。

「《エミリーさんの友人です。 お父様の代わりに付き添いでやってきました》」
「《遠いところからわざわざご苦労様でした……ゆっくりなさってください》」

ありがとうございます、とお礼を添えて私はスチュアート家の敷居を跨いだ。



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