69: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:59:09.29 ID:9pdDfgPfo
用意してくれた客間へキャリーバッグを置き去りにし、居間でお母様と話をしていく。
エミリーは長旅で疲れたのか、自室で少し休むといって鍵を閉めてしまったのでそっとしておいた。
「《私も夫も、今回のことは本当に残念に思います》」
用意してくださったストロベリー風味の紅茶とスコーン──緑茶と抹茶菓子をたまたま切らしていて、と謝罪されてしまった──を頂いていると、
エミリーの母親はゆっくりと切り出した。
「《私たちと同じように日本を好きになってくれて本当に嬉しかった……元に戻ってくれるなら、それが一番なんですけれどね》」
「《そのことなんですが》」
こちらも一応、わざわざやって来た理由を改めて話しておくことにする。
「《エミリーさんが日本に憧れるきっかけになった、日本人の女の子がいたと伺っています》」
「《まあ、ご存じだったんですね……》」
「《お父様から、色々と》」
「《もうずいぶん小さい頃の話だから、あの子もすっかり忘れてるんだと思っていました》」
お母様がふと天井を見上げる。その方向の先にエミリーの部屋があるのだとなんとなく察せられた。
「《けれど昔は私たちにしょっちゅうその子の話をしてくれましたよ。
『難しい漢字を書けるようになった。知ったら喜んでくれるかな?』とか、
『いつまたあの子に会ってもいいように、日本語をもっと喋れるようになりたい』とか……それはもう、毎日のように》」
「《そうだったんですか……》」
「《エミリーが私たち以上に日本語が上手になったのは、きっとずっとその子のことを思いながら毎日一生懸命勉強を続けてきたからなんでしょうね》」
「《……それが“よりちゃん”ですか?》」
「《ええ。 確か、そんな名前の子》」
父親同士が一緒に仕事をしたことがあるので夫のほうが詳しいと思います、とお母様は付け加える。
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