157:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:35:24.51 ID:YWfCY9A20
他でもない自分自身の姿から放たれた言葉が自分自身の胸に刺さるということもあるけど、よくよく考えてみれば、それらの言葉は自分たちの身近な人が口を酸っぱくして放つものとほとんど同じだ。
「……私たちに対しても、そう思ってるんだろうね」
158:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:36:19.25 ID:YWfCY9A20
サアヤは思い立ったように、長椅子から腰を上げた。それからさあやに一歩、二歩と近付く。そしてなんとはなしに前へ右手を伸ばしてみると、ちょうどふたりの中間くらいに、透明の壁があった。
その見えない壁に掌をつける。少しだけ弾力のある、なんだか温かみのある感触がした。
159:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:37:00.55 ID:YWfCY9A20
「でも、やっぱりこっちの世界の沙綾はあなただよ」サアヤは囁くように言葉にする。「どんなに温かくて明るい陽だまりだって、これは私のためのものじゃない」
「そうかもしれないけど、でもさ」さあやも同じようにささめく。「偽物じゃないよ。出会った人たちも、もらった優しさも、それが私たちにとって大事なことも……全部、本当だよ。本物だよ」
160:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:38:12.67 ID:YWfCY9A20
瞳を閉じる。このおかしな、ジョーシキじゃありえない日々を脳裏に呼び起こす。
暗い校舎、さびしい教室。
161:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:39:19.25 ID:YWfCY9A20
瞳を開く。眼前には、少しだけ見慣れた山吹沙綾がいた。
「……初めまして、かな」
162:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:39:45.16 ID:YWfCY9A20
――電車の進行方向。ずっと続く線路の先には、大きな二重の虹がかかっているんだから。
163:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:40:51.08 ID:YWfCY9A20
エピローグ:さあや
スマートフォンの目覚ましの音がした。
164:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:41:21.31 ID:YWfCY9A20
もしかしてずっと夢を見ていたんじゃないか、なんて不安になったから、沙綾はスマートフォンのディスプレイを覗き込む。そこに表示された日付は十一月十四日の水曜日。
入れ替わった自覚があったのが九月の終わりだし、星を見ようと約束したのは十一月十三日だった。
165:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:42:03.69 ID:YWfCY9A20
久しぶりに袖を通したワンピースの制服には懐かしさと新鮮さが同居していて不思議な感じがした。髪の毛も懐かしさを感じるシュシュでポニーテールにくくって、沙綾は台所まで足を向けた。
「…………」
166:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:42:40.91 ID:YWfCY9A20
「どうしたの?」
「呼び方がまた戻ったなって思って」
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