122:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:08:27.55 ID:YWfCY9A20
私はずっとずっと逃げ続けていた。この世界からも、もしも入れ替わったらなんていう非常識な現実からも目を背けていた。夢を見ているみたいに、都合のいい部分だけをかすめ取ろうとしていた。
心に引っかかる得体のしれないもの。出所不明の寂しさとか、奇妙な安心とか、母親の背中に投げた「ごめんなさい」とか。
123:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:09:09.70 ID:YWfCY9A20
沙綾は嗚咽を噛み殺して、滲む視界に歌の続きを映す。そこには香澄からのメッセージが一言あった。
――沙綾ちゃんが元気になってくれますように。
124:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:09:51.36 ID:YWfCY9A20
「サーヤ」
柔らかな声で呼びかけられた。机から視線を外して顔を上げると、優しい笑顔を浮かべたカスミがハンカチを差し出してくれていた。その表情が沙綾の中で香澄と重なって、さらに顔がくしゃりとする。
125:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:10:42.28 ID:YWfCY9A20
8
今まで本当にごめんね。私、サイテーだ。あなたの居場所を奪おうとしてた。
126:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:11:31.83 ID:YWfCY9A20
うん……ありがと。
正直に言うとない……ね。そういえば、入れ替わった前日って何してた? 私は有咲ちゃんの蔵で練習して、それからポピパのみんなと遊んでたけど。
127:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:12:21.29 ID:YWfCY9A20
9
晩秋の夜空は空気が澄み、晴れ渡っていた。
128:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:13:13.58 ID:YWfCY9A20
『ねぇ、沙綾ちゃん!』
ふと、声をかけられた。閉じていた瞼を開く。すると、目の前には香澄がいた。
129:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:13:48.97 ID:YWfCY9A20
それは花咲川高校の沙綾も同じだった。
目の前にいるのは、やっぱり自分の知るPoppin'Partyよりもいくらか破天荒な四人。だけど目を瞑れば、瞼の裏には自分のよく知る大切なみんながいる。
130:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:14:24.88 ID:YWfCY9A20
銀河鉄道の夜。ジョバンニとカムパネルラ。本当の幸いについて。
あの話の中では、幸せとは「迷いない自己犠牲の心」とされていた。それはきっと他者貢献の奉仕の心だろう。それともうひとりの自分のことが被る。
131:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:14:59.36 ID:YWfCY9A20
声をかけられて、ハッとする。
目の前には親友たちによく似たとても優しい友達がいて、沙綾のことを心配そうに覗き込んでいた。
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