一ノ瀬志希「ほころび」
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38:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:12:00.74 ID:D/gZfYJM0
「志希! これはどういう事だっ!!」

 あたしの後ろで、彼の怒鳴り声が聞こえた。
 生返事でそれに答えるあたしも、すっかり日常のワンシーンだ。

以下略 AAS



39:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:15:34.58 ID:D/gZfYJM0
 あたしは、違う。良い子なんかじゃない。

 彼の――ダッドの期待の全てに答えようとしたけど、それを達成できずに逃げたあたしの本質は、謙虚なんかでは決してない。

「にゃははー! プロデューサー、じゃあこれをキミにかけてあげよ〜♪」
以下略 AAS



40:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:18:34.90 ID:D/gZfYJM0
 なぜ夕美ちゃんは、あたしを謙虚と評したのか?
 改めて考え直した結果、あたしは違う可能性を見出した。

 いつか謙虚になってほしいという、将来に向けた願望。
 あるいは、そばにあったキンモクセイから得た、深い意味を持たない思いつき、といったところか。
以下略 AAS



41:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:22:37.89 ID:D/gZfYJM0
 人はレッテルを貼るのが大好きだ。
 ケミカルの現場にいた時から、それは重々承知している。

 人は無知を恐れる。

以下略 AAS



42:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:26:40.66 ID:D/gZfYJM0
 なりゆきと気まぐれで始めたピンクのキンモクセイ作りは、思いのほか時間を要する。
 それは、あたしにとってはたぶん、歓迎すべきことだった。

 絵の具のようにピンクの色素を配合すればピンクになるわけではない。
 計算と予測、そして――根気だ。
以下略 AAS



43:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:29:28.91 ID:D/gZfYJM0
「仕事を休みたい?」

 驚きの色を多分に含んだ彼の声が事務室に響く。

「すみません、Pさん」
以下略 AAS



44:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:30:59.94 ID:D/gZfYJM0
「理由は聞かないであげてよ」

 あたしは二人の間に割り込み、プロデューサーににへらと笑った。

「あたしなんかと違って、夕美ちゃんが大事なお仕事をすっぽかすような子じゃないの、プロデューサーも知ってるでしょ?
以下略 AAS



45:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:34:18.12 ID:D/gZfYJM0
「……それで、私に何か、用?」


 陽が落ちるのも早いし、マンションの屋外廊下を通り抜ける風も肌寒い。
 一緒の仕事帰り、マフラーに顔を埋めながら自分の部屋の鍵を開ける夕美ちゃんは、あたしに不安げな表情を見せていた。
以下略 AAS



46:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:37:22.75 ID:D/gZfYJM0
 花が――お部屋の中に、一つも無い。


 いや、さっき通った玄関と、トイレと、冷蔵庫の上――。
 そういう所には、申し訳程度だけど、あるにはある。
以下略 AAS



47:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:40:09.38 ID:D/gZfYJM0
「んーと……こっちの子達は、温度とか湿度とか、気にしてあげる必要があるの。
 ほら、最近、寒いし」

「ふーん」

以下略 AAS



48:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:43:12.43 ID:D/gZfYJM0
「えっ? あ……うん、いいよっ」

 夕美ちゃんの表情は、本当にコロコロとよく変わる。
 彼女はおそらく、ロクにウソを付いたことすら無いんだろうな。

以下略 AAS



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