41:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:22:37.89 ID:D/gZfYJM0
人はレッテルを貼るのが大好きだ。
ケミカルの現場にいた時から、それは重々承知している。
人は無知を恐れる。
学術論文の発表の場において、本当の真実なんてほんの一握りだ。
いかに通りの良い、それらしい、反論の余地が無い屁理屈を提唱するか。
彼らの世界では、優秀なプレゼンターであることが優秀なケミストの条件だった。
ほんの一握りの真実を本当に解明してしまう、あたしを除いて。
非の打ち所の無い正論は、嫌われる。
自分の物差しで測れないものを、彼らはやがて恐れた。
その結果として、ひとまずのキャラクタライズを彼らは試みた。
“ギフテッド”というレッテルは、異物と見なされたあたしを端的に表する記号だ。
そして――ダッドさえ、その安直な記号でしかあたしを見ることができなくなった。
あたしは、やっぱり見つけてほしいのかな――。
ガレージに置いた冷蔵庫をカパッと開けて、エナドリを一本。
プロデューサーが最近、他所の事務所から仕入れてきている栄養ドリンクらしい。
それと、ふむ――今日はビールは入っていないな。
見つけた夕美ちゃんが彼を叱りつけるのを見るのも、それはそれで楽しいんだけどね。
今度コッソリ買って入れてみようかにゃ。ふふっ。
――おっといけない。滴定を始めてからもう2分を過ぎている。
濃度を測定、ふむ――66%。予測通り。優秀優秀。メモメモ。
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