一ノ瀬志希「ほころび」
1- 20
41:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:22:37.89 ID:D/gZfYJM0
 人はレッテルを貼るのが大好きだ。
 ケミカルの現場にいた時から、それは重々承知している。

 人は無知を恐れる。

 学術論文の発表の場において、本当の真実なんてほんの一握りだ。
 いかに通りの良い、それらしい、反論の余地が無い屁理屈を提唱するか。

 彼らの世界では、優秀なプレゼンターであることが優秀なケミストの条件だった。
 ほんの一握りの真実を本当に解明してしまう、あたしを除いて。

 非の打ち所の無い正論は、嫌われる。


 自分の物差しで測れないものを、彼らはやがて恐れた。
 その結果として、ひとまずのキャラクタライズを彼らは試みた。

“ギフテッド”というレッテルは、異物と見なされたあたしを端的に表する記号だ。

 そして――ダッドさえ、その安直な記号でしかあたしを見ることができなくなった。

 あたしは、やっぱり見つけてほしいのかな――。


 ガレージに置いた冷蔵庫をカパッと開けて、エナドリを一本。
 プロデューサーが最近、他所の事務所から仕入れてきている栄養ドリンクらしい。

 それと、ふむ――今日はビールは入っていないな。
 見つけた夕美ちゃんが彼を叱りつけるのを見るのも、それはそれで楽しいんだけどね。
 今度コッソリ買って入れてみようかにゃ。ふふっ。


 ――おっといけない。滴定を始めてからもう2分を過ぎている。
 濃度を測定、ふむ――66%。予測通り。優秀優秀。メモメモ。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
138Res/139.96 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice