一ノ瀬志希「ほころび」
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38:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:12:00.74 ID:D/gZfYJM0
「志希! これはどういう事だっ!!」

 あたしの後ろで、彼の怒鳴り声が聞こえた。
 生返事でそれに答えるあたしも、すっかり日常のワンシーンだ。

「んー? 新しいお花の生成実験」
「事務所全体にキンモクセイの匂いが充満してるのはそのせいか!?」
「ごめんねー、換気扇を伝って全部に回っちゃうみたいで」
「チキショウ! これから外回りだってのに『キンモクセイの匂いする人』って後ろ指さされちまう!!」

「アハハ、えーと……ごめんねPさん、私が止めなかったせいかも」

 頬を掻きながら、場を宥める夕美ちゃん。
 その“大人な対応”が、何となく不愉快に思えてしまう。


 あの日、夕美ちゃんに言われてから、あたしの言動はますますエスカレートした。
 こうして事務所全体に迷惑をかけることなんて序の口。
 レッスンやお仕事に時間通りに到着したことなんてまず無いし、気が乗らない時はドタキャンだってした。
 その度にプロデューサーは頭を下げた。あたしも下げさせられた。

 あたしが謙虚で慎み深い――。
 夕美ちゃん、これを見ても同じことが言えるの?

 ムキになるなんて、ガラじゃない。
 だけど、明らかに誤った認識は正すべきだ。
 スペクトルが卓越していれば、それだけ明瞭な判断が可能となる。



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