483:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:39:29.27 ID:CaLDwjtG0
透水「……私は海とお風呂が大好きです」
背中に張り付くように呟かれたその言葉に紺之介は歩みを止めた。
紺之介「知っている」
484:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:40:58.06 ID:CaLDwjtG0
透水「それは将軍さまと一緒にいたときからそうに違いなかったのですが……暫く導路港にいてもっと大好きになった気がするんです。この気持ちはきっとこの身体にならないと分からなかった」
先の焦りの反動かその声はいつもにも増してか細く繊細につづられる。
透水「愛栗子ちゃんのお話を聞いてて思ったんです。だからもし、私にとってのそれが愛栗子ちゃんの紺之介さんへの想いなら……それはとっても素敵なことだなって……紺之介さんも愛栗子ちゃんのことが大好きなんじゃないんですか?」
485:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:42:02.56 ID:CaLDwjtG0
紺之介「無論。やつほどの美刀、この手中に収めんと奮闘してここまで……」
そこまで口にして紺之介は目を見開く。
彼は己が何のために歩みを積み重ねてきたのかを思い出したのである。
486:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:42:44.34 ID:CaLDwjtG0
紺之介「フッ」
紺之介は言葉を詰まらせたかと思うと唐突に短く鼻笑いをこぼした。
透水「ふぇ? どうしたんですか……?」
487:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:43:54.77 ID:CaLDwjtG0
薄く浮かべられた彼の笑みに透水は満面の笑みで返した。
透水「よかったぁ……紺之介さん、導路港で初めて会ったときよりすごく怖い顔してたから……」
488:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:45:01.63 ID:CaLDwjtG0
吃る透水、それを見つめる紺之介。
少しばかり膠着した両者だったがとうとう透水が紺之介の視線から逃げるようにして目をそらし、そうして露骨に声を上げると長湯から立ち上がった。
透水「ああきもちよかったぁ〜!」
489:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:45:46.91 ID:CaLDwjtG0
汗にも似た水滴が透水の頬を伝う。
彼女が唾を飲み込んで一呼吸置いたとき、それまで『大した理由ではない』と決めつけていた紺之介もつられて漂う緊張感に当てられた。
紺之介(一体何をそんなに躊躇う必要がある)
490:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:46:29.17 ID:CaLDwjtG0
紺之介「ふっ……! ふっ……!」
日に十里ばかり渡り歩き夜は鍛えるために真剣を振るう……当然今日も既に疲労を蓄積させた紺之介の身体であったが何故かその身は眠るにいたらなかった。
491:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:47:10.43 ID:CaLDwjtG0
「精がでるのう」
そしてその動揺は突如形となりて夜深き闇に浮かびあがる。
声が耳に入るやいな腰の碧鞘を握り込んだ紺之介であったが、ひとまず喉にせり上がる『のうとう』の四文字を呑み込むとその動揺の根源を無理やり振り払うのをやめた。
492:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:47:54.18 ID:CaLDwjtG0
愛栗子「じゃが、それではあやつらには勝てぬ」
だが聞く前に加えて彼の癇に触る愛栗子の言動。紺之介はそちらの方が気に食わず思わずそれについての返答をしてしまった。
紺之介「だからこうして少しでも鍛えている」
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