280:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:06:08.32 ID:QarN0Zl90
紺之介「待て」
だがその男を引き止めてしまったのは意外にも紺之介だった。
茢楠「……はい?」
281:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:06:39.27 ID:QarN0Zl90
彼の言葉にしばらく間を抜かした茢楠であったが再び座り直すと己への戒めのつもりだったのか、はたまた僧故の温厚さか、快く紺之介の要望に応えることとした。
茢楠「ええいいでしょう。やはり、気になってしまいますよね」
乱怒攻流「まぁいいんじゃない? 本人もああ言ってるんだし」
282:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:07:08.97 ID:QarN0Zl90
茢楠「はは……自分で言うのもなんなんですけどね。私、今でこそ坊主の面を被らせて頂いておりますが、昔はどうしようもない荒くれ者だったのです」
紺之介「荒くれ者……?」
紺之介思わず床に視線を落としそのまま上へ上へと茢楠を見直して行く。
283:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:07:43.30 ID:QarN0Zl90
乱怒攻流「あんたが荒くれ者ね〜……想像もつかないわ」
茢楠「お褒めに預かり光栄にございます。そう言ってくださると、この自責に費やした十の年月に意味があったのだと……奢ってしまいそうになります」
紺之介(荒くれ者……十年の自責……もしや最初に感じたこいつの歪みはそれか)
284:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:08:25.79 ID:QarN0Zl90
茢楠「この世に絶望し、ただ暴力を振るうのだけが取り柄だった私はある日流浪の剣士と出会いました。それが」
紺之介「梅雨離 最高、だな」
紺之介、展開を急かす様にして口を割る。
285:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:09:03.77 ID:QarN0Zl90
茢楠「私は最高さんの護衛剣術に宿る『守るための強さ』に惹かれましてね。彼に弟子入りを頼んだのですがそれもまた断られてしまいまして……ああ、私の過去は思い出せば恥ずべきことばかりですね」
紺之介「続けてくれ」
茢楠「ん、失礼。ですがその代わりに最高さんは『守るための強さならこいつが教えてくれる』と言ってフミを私に預けてくださいました」
286:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:10:44.27 ID:QarN0Zl90
茢楠「フミは私に優しさを教えてくれました。時には誰かを助け、そうして時には誰かに無理せず寄りかかること……自らがその依り代たる器になること。私は誓いました。その『誰か』を必要としたフミがすがる先は、私自身になることを」
茢楠「それほどまでに、愛しているんです。彼女を」
乱怒攻流「ふーん……ぁいたっ、何すんのよ!」
287:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:11:14.72 ID:QarN0Zl90
茢楠「ありがとうございます。ですが、どうもそうはいかないこともあるようで……稀に彼女が何処か遠くに切ない眼差しを送ることがあるんです。まるでその先に、私も知らない大切な何かがあるかのように」
愛栗子「茢楠、それは恐らくの……」
詳細を口に出そうとした愛栗子に茢楠は語らせまいと目を閉じて右手を挙げた。
288:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:11:47.37 ID:QarN0Zl90
愛栗子「そうか。よかったの紺……こやつはよく出来た男じゃ」
愛栗子が清すぎるとも言える彼に賞賛の言葉を送りその言葉をもって彼らの対話は一度畳まれた。
座っていた幼刀二人と茢楠はその場を立ち上がった。これにて話は一件落着……と誰もが納得したかと思いきやその中で紺之介だけがまだ腕を組み胡座をかいていた。
289:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:12:48.76 ID:QarN0Zl90
紺之介「……いや、やはりいきなり押し掛けて長きを共にした刀を寄越せというのはムシのいい話だと思ってな」
乱怒攻流「は!?」
愛栗子「ほう? して、どう決着をつけると?」
290:名無しNIPPER[saga]
2019/07/10(水) 18:13:19.64 ID:QarN0Zl90
紺之介の発言と面持ちに茢楠は一瞬呆気に取られたかのような表情になったが直ぐに彼の言い分理解し確認に移った。
茢楠「つまり、フミと貴方が模擬試合を行い貴方が勝てばなんの蟠りもなくフミをここから連れ出すと」
紺之介「ああそういうことだ」
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