238:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:56:12.49 ID:f3jC59Mz0
…………………………
奴「ぅ、ぐひゅ……ぅ゛〜」
べそをかく奴の前に漆黒の足音が迫る。それは一歩また一歩とかさねるごとに重みを増し、枯葉や枝木を強く軋ませた。
239:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:56:50.08 ID:f3jC59Mz0
着々と葉を割る足音は立ちはだかる彼女らを前にしてとどめられた。
児子炉「っ……!」
240:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:57:19.08 ID:f3jC59Mz0
乱怒攻流「あ、ちょ……あんたも待ちなさい!」
その小さな背中にもう乱怒攻流の言葉が届くことはなし。虚しく高木々に吸われた彼女の声を愛栗子が供養するかのようにいさめた。
愛栗子「よいよい走らせておけ……それよりも今はこっちの黒づくめの方じゃ」
241:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:58:57.88 ID:f3jC59Mz0
愛栗子「乱、導路港で笛をうさしたとき……ぬしはわらわも戦っておればああはならなかったと申したの」
愛栗子が真剣な面持ちのまま依然として困惑気味であった乱怒攻流に話を振った。
流れに乗せられそのまま首を縦に振りそうになった乱怒攻流であったが寸手でいつもの強情な我に返りて虚勢を張る事とする。
242:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:59:46.96 ID:f3jC59Mz0
愛栗子「その借、ここで返させてはくれぬかの」
愛栗子が己の左胸を手のひらで包み込んだ。瞬間乱怒攻流は目を見開く。彼女は愛栗子のそこに何があるのかを知っていた。
乱怒攻流「面倒臭がりのあんたがその金時計の『刀』を使うだなんて」
243:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:00:15.26 ID:f3jC59Mz0
児子炉「あ゛り゛す ! あ゛り゛す! あ゛ぁ゛ぁ゛り゛ぃ゛!」
世に存在する怨恨やら憎しみやらを可視化させたかのような邪気が児子炉と熊人形を包み込み黒い稲妻となって電光石火の愛栗子を迎え撃つ。
白き光の如き愛栗子と黒の怨みを纏う児子炉がぶつかり合うとき、それがこの旅の果てと乱怒攻流が直感で悟ったときだった。
244:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:02:41.58 ID:f3jC59Mz0
……………………………
薄暗い裏路地に一人、源氏は億劫な表情を浮かべつつ児子炉の鞘を抜いた。
245:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:03:34.36 ID:f3jC59Mz0
………………
紺之介「源氏、率直に言うとだ……今の俺はお前に本気になれない」
源氏「あ゛? そう水臭ェこと言うなよ。本気で殺し合おうぜ? なにせ俺はてめェの親父の仇なんだからよ」
246:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:06:01.56 ID:f3jC59Mz0
紺之介「今の俺はその件やお前のここに至るまでの行いに対して強い憎悪や怒りを覚えている。それに任せて剣を振りかねんということだ」
紺之介「それ即ち護るための剣にあらず。それはもはやただただお前を斬り伏せるためのみ存在する太刀筋だ。護衛剣術を得意に扱う身としてこれ以上に不利なことはない」
源氏「ほう?」
247:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:06:42.69 ID:f3jC59Mz0
紺之介が源氏という男に理解を示したように源氏もまた紺之介という男を剣を交える過程で理解しかけていた。
源氏(確かにコイツが幼刀の一件から完全に手を引くとは思えねェ)
それは紺之介の熱意が源氏を瀬戸際で引き離した悪魔の契約であった。
248:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:07:18.70 ID:f3jC59Mz0
……………………
源氏(初対面で俺の事をあそこまで知り尽くしたのはやはり最高の血を引く所か……親子揃って俺をひりつかせやがる)
源氏「次は殺す」
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