189:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:46:28.27 ID:/2q0Qaon0
………………
紺之介「静かな夜だ」
茶居戸の深い夜。腰に幼刀愛栗子-ありす-と幼刀乱怒攻流-らんどせる-を差した紺之介は久しく独りの夜の中にいた。
190:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:47:27.73 ID:/2q0Qaon0
紺之介一人雑木林の方向へと歩を進めていく。地擦る草履の雑音だけが夜道に何度も刻まれる。
一擦り、二擦り、一擦り、二擦り
その中で紺之介はある異変に気がついた。
191:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:48:46.61 ID:/2q0Qaon0
紺之介が歩みを止めてから十と経過した後、それは突如俊敏に動き始めた。
紺之介「……!」
一擦り、二擦り……三、四、五六七八
192:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:49:43.56 ID:/2q0Qaon0
「強ぇな」
紺之介を簡潔かつ一言で褒め称えた彼の言葉に紺之介の口は噤まれた。
『対面の者が強者であること』
193:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:50:24.12 ID:/2q0Qaon0
しかし彼らの間で違ったのが余裕の差異である。
髭の濃いその男はその言葉を口にしても尚余裕に満ち溢れていた。故に推測される。その言葉の持つ言霊は『悦』
一方紺之介の口から出かかったソレの源は『恐れ』
194:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:51:33.56 ID:/2q0Qaon0
紺之介はらしくなしに彼に若干の恐怖を抱いていた。
紺之介(なんだ……こいつっ……)
髭の男の面構えの中には禍々しい狂気たる何かが渦巻いており、それを紺之介は本能的に感知したのである。
195:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:52:42.98 ID:/2q0Qaon0
紺之介「『刀狩り』か?」
「いいや、違うぜェ」
196:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:53:36.39 ID:/2q0Qaon0
「あ゛? んなモン強そうだったからに決まってるじゃねェか」
紺之介「は……?」
男の返事に紺之介の額は多くの汗に濡らされる一方である。彼の募り募った焦りはとうとう確信へと迫った。
197:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:55:17.83 ID:/2q0Qaon0
紺之介「源氏……」
紺之介はそう呟いて己の旅の記憶を辿りつつ彼が何者なのかを改めて模索し始めた。
まだ信用ならなかったのだ。『全くの他人を一目見ただけで強者と決めつけ尚且つそれだけを理由に斬りかかる』彼の心情を。
198:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:56:00.06 ID:/2q0Qaon0
源氏「なァもういいか? 三つも質問に答えてやったんだ。そろそろ殺し合ってくれたっていいよなァ!!!」
紺之介「っ……!」
紺之介が納得いく結論を出す隙もなく源氏は再び彼に太刀を下す。二度目の一撃は不意に来た先ほどの物より重く、紺之介の愛刀に威圧抑圧重圧がのし掛かる。
199:名無しNIPPER[saga]
2019/04/08(月) 22:57:07.18 ID:/2q0Qaon0
源氏「うぉっ」
自らにかけられた源氏の体重を利用し彼の剣を引き寄せてから滑らせ彼が前のめりに躓きかけたところを素早く右にかわし側背を取る。
紺之介(もらった……!)
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