魔王「停戦協定を結びに来た」受付「番号札をとってお待ちください」
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:02:43.49 ID:sCIvJdmA0
それも実に魅力的な提案に思えましたが、しかし、のんびりできるというほどには時間がないのもまた事実。アトレイはそれほど食事を必要としませんし、余ってしまうでしょう。
鉱瘴で支払えるならばそれに越したことは勿論ありません。あたしには大して必要のないものです。
それをおじさんの手のひらに乗せると、おじさんは慎重にそれを前掛けのポケットへと入れました。瘴気が年月をかけて固形化したそれは貴重な品です。魔道具屋か、あるいは鍛冶屋などにいけば、そこそこの貴重なものとして扱ってくれるでしょう。
以下略
AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:03:45.03 ID:sCIvJdmA0
* * *
あたしの手にはほかほかの串焼きが二本あります。茶色いほうはタレに付け込まれた魔ブルゲー。桃色の肉の隙間から白い脂身が覗いているのは、軽く塩を振って炙られたブルゲー。どちらからもいい香りが立ち上っています。
冷めないうちにと小走りでアトレイのもとへとたどり着くと、彼はあたしが戻ってきたのにも気づかぬ様子で、紙を目の前になんだか唸っていました。
以下略
AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:04:19.90 ID:sCIvJdmA0
差し出された書類は上から順に埋められていましたが、真ん中より少し下あたりから空白が続いています。具体的には、職業欄を皮切りに。
「職業欄に魔王って書いてもいいかな?」
以下略
AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:05:21.54 ID:sCIvJdmA0
意地の悪い言い方である自覚はあります。やりたくもないことをやらされる悲哀は身に沁みてわかりますから。
ただ、才能のある存在を世の中は放っておいてはくれないのです。そして本人も、口では嫌だと言いつつも、自らの責務と理想を熟知しているからこそこうしてわざわざ人間族の本拠地まで足を運んでいるわけでして。
アトレイはため息をつきました。それがあたしの言動に対してのものなのか、それとも自らの境遇についてのものなのかは、あたしにはわかりません。
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AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:06:17.66 ID:sCIvJdmA0
あたしは外に出て、噴水の周りにある四角い石へと腰を下ろします。燦々と照らす青の太陽。くすみ雲がいいアクセントで、思わず息をつきました。
沢山の人間が目の前を過ぎ去っていきます。この人間たちそれぞれに、それぞれの生き様があり、物語があるのだと考えると、眩暈がしそう。
でも、悲しいことにみぃんな死ぬのだ。このままだと。
以下略
AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:06:43.36 ID:sCIvJdmA0
「すいません」
と、声をかけられた。あたしは想像を振り払い、笑顔を張り付けて対応する。
以下略
AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:08:42.21 ID:sCIvJdmA0
――殺すか?
一瞬だけ剣呑な考えが頭をよぎるも、あたしはかぶりを振ってその暗い雲を弾き出した。ここは戦場ではない。アトレイはそうすることをあたしに望んでいない。例え仇敵であろうとも。
それは傭兵としてのあたしの打算であったけど、同時に、あたしの「ハルルゼルカル」としての欲求は別のところにあった。
以下略
AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:09:28.63 ID:sCIvJdmA0
喉が鳴る。傭兵としてのあたしが戻ってくる。
いやいや、だめだ、だめでしょ。落ち着いて。傭兵は雇い主の意向が絶対なのだ。そこを放棄しては矜持に関わる。次の仕事にもありつけない。悪評は振り払おうにも、どうしたって着いて回るものだから。
あくどいことに躊躇はなくても、それは決してお尋ね者になることを厭わないということでは、ない。あたしはまだ往来を闊歩したいのだ。
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AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:10:08.38 ID:sCIvJdmA0
とはいえそんなのは人間に限った話ではないのかもしれない。どこの世界にだって、どの種族にだって、よくも悪くもはみ出し者はいる。
あたしだってそう。アトレイだってそう。
「……」
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AAS
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◆yufVJNsZ3s
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2018/12/31(月) 22:11:16.26 ID:sCIvJdmA0
四人全員が純血の人間だ。二刀を携えた剣士、禿頭の探検家、前髪で目を隠した魔術師、蛇のような雰囲気の僧侶。和気藹々と話しこんでいるように見えて、どこか……なんていうのか、嫌な空気を身に纏っている。
あたしが魔族側についているからそう感じているだけ? だったらどんなにいいだろう。
どんなにいい人物に見えたって、魔族との開戦の口火を切ったのは、こいつら人間族の一方的な侵略だってことを忘れるつもりはなかった。
以下略
AAS
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