19:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:29:25.67 ID:wXX+fiS7o
――――――
新学期が始まって間もなく、桜の花びらも散りきらないようなある日の放課後、忘れ物を取りに教室にもどった私は、引き戸に手をかけたそのとき、
中に人の気配が残っていることに気がつきました。
20:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:30:58.31 ID:wXX+fiS7o
「……知ってるんですか?」
先生は驚いた表情でこちらをゆっくりと振り返り、尋ねてきます。
21:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:32:23.93 ID:wXX+fiS7o
学校で同じ趣味を持っている仲間がいたのがとっても嬉しくて、部活動にも入っていなかった私は放課後、
先生と一緒に教室でアイドルソングを聴いては語り合う日をしょっちゅう過ごしました。
「見てください、これ。レコードよりもバックバンドがかなりアップテンポです」
22:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:33:54.31 ID:wXX+fiS7o
――――――
「この間の進路調査の用紙、見ました。長富さんは研究者になりたいそうですね」
23:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:35:31.06 ID:wXX+fiS7o
「先生。かつてのアイドルたちも、進路調査には適当書いていたんでしょうか」
「あはは。 どうでしょうね……」
背を向けたまま、先生は静かに笑います。
24:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:37:58.62 ID:wXX+fiS7o
――――――
先生と一緒に音楽を聴いていく日々は結局、卒業式の前日まで続きました。
25:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:38:40.39 ID:wXX+fiS7o
「長富さんは確かに、今時珍しい好みを持っているかも知れません。 でも、きっとそのこだわりは人生を良い方向に導いてくれるはずです」
「人生を……」
「いつまでも自分の好きなものを好きでいることって、とても素敵なことです。たとえそれが古くさくて、他の人が見向きしなくても、長富さんだけはずっと好きでい続けて下さい。
そして自分の好きなものを信じて突き進んでほしい」
26:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:39:20.68 ID:wXX+fiS7o
「もちろん貴女と同じ趣味を持った人たちはいると思いますよ、先生みたいにね。
だけどきっと多くはなくて、それぞれが今の長富さんみたいに、『こんな趣味はもう流行らないのかも』って心配になっていることでしょう」
そして、
27:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:41:12.01 ID:wXX+fiS7o
――――――
「長富さんですが、残念ながら一学期をもって転校します」
28:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:42:13.94 ID:wXX+fiS7o
あぁ、言ってしまった。
笑われるだろうか?
おまえには無理だろうと、馬鹿にされるだろうか?
しかし、仮に笑われたとしてもかまいません。
29:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:43:56.12 ID:wXX+fiS7o
「……てっきり笑われるかと……」
思わずこぼすと、
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