長富蓮実「ザ・ラストガール」
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22:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:33:54.31 ID:wXX+fiS7o
 
――――――

「この間の進路調査の用紙、見ました。長富さんは研究者になりたいそうですね」

すっかり先生と仲良くなっていた2学期、いつもの時間に先生が切り出します。
こうやって一緒に音楽を聴いているときにそういう話をされたことがなかったので、不意打ちでした。

「あれですか? えっと……確かにそう書いたかも……」

確かに、まだ堂々と書くのは恥ずかしくて、多少ごまかした節もあります……ばれていたのでしょうか。

「大学へ行く気はないのですか? 『80年代歌謡文化』について専門的な勉強ができますよ。社会学科とかへ行けばね。
 長富さんならそのままいい教授になれそうです」

なんて、先生が茶化します。
どうやら今日のレコードよろしく、大人になるために色々考えなさいということなのですが、あいにく手元にチョコレートはありません。

「まあ、他の生徒も似たようなものなので安心していいですよ」
「そうなんですか?」
「スポーツ選手になりたいとか、宇宙飛行士になりたいとか、電車の運転士になりたいとか……仮に中学生が持つ夢なんて、子供の憧れの延長です。
 みなそれぞれに抱えていても、正直に書いて笑われるのが怖くて、進路調査なんてやったところで結局は無難な内容になるのがほとんどです」

そう言われると、なんだか心がちくりとします。

「ただ……そうやってごまかしで書いているのと、本気でなりたくて書いている人の違いくらい、先生にも分かりますよ」
「へぇ……」
「長富さんは確かに研究者向きかもしれませんが、本当は希望なんてしていないって事もね」
「…………」
「おっと……レコード、換えましょうか。次は誰にします? セイコちゃんかモモエちゃんか」

気づくとプレイヤーはとっくに再生を終えて、ブツブツという特有のノイズが響いています。
先生は立ち上がって別の一枚を引っ張り出そうとゴソゴソ鞄をあさり始めました。


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