1: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2018/12/03(月) 22:50:55.73 ID:HY1MskrZ0
===
十二月、それは新年へ向けたカウントダウン。
突入すれば「一年過ぎるのも早いもんだ」なんてしみじみ振り返ってみたり、
まだ半月以上もあるというのにクリスマスの輩があちこちに姿を現したり。
とにかく日本人というやつが、八月と並んで馬鹿に陽気になるのが十二月なのではないだろうか?
また、読者諸氏には知られた話であるだろうが、
吹き付ける海風の勢いが増そうと765プロライブ劇場は相変わらずの常春気分。
女三人寄れば何とやら、と言ったお決まりのフレーズが安売りされているようなこの場所では、
まぁ、季節というのは基本あって無いようなモノであり、彼女らのプロデューサーである私としては、
順調に増えだすグルメロケと年末年始のイベントラッシュの方が余程寒波よりも身近な悩みである。
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2:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 22:54:03.10 ID:HY1MskrZ0
そうして迎えた十二月三日。
この日は担当アイドルのうちの一人、野々原茜の記念すべきバースデイでもあった。
3:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 22:55:17.16 ID:HY1MskrZ0
…で、あるからして。
「当然覚えているに決まっている」と私は彼女に返してやった。
4:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 22:56:16.55 ID:HY1MskrZ0
===
「あっ、プロデューサーさん」と、控え室に現れた私に幾つかの視線が集う。
普段使われている長机には茜の他に二人の人間、天海春香と北上麗花の姿があり、
5:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 22:57:18.42 ID:HY1MskrZ0
「茜ちゃんのパーティ中止なんだそうです」
そう麗花がしょんぼり口を開けば。
6:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 22:58:41.86 ID:HY1MskrZ0
「なぁ春香、この黒ペンで書き込んでるのはひょっとして……」
「……社長です。たまたま私たちと一緒にこっちへ来てて」
7:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 22:59:54.86 ID:HY1MskrZ0
結果、ホワイトボードの隅に書かれることとなった茜の返信――慌てた筆跡の「いったん中止」が痛々しく視線をひくのである。
そうして、それを書かざるを得なかった本人の落ち込む姿というのも、また。
8:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:00:52.59 ID:HY1MskrZ0
「随分とやられてるじゃないか。……それとも、黙ってたのは演出を考えていたからか?」
茜が僅かに顔を上げる。
9:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:02:09.76 ID:HY1MskrZ0
「それで、何をするつもりだ。良かったら相談聞いてやるぞ」
「……プロちゃんが?」
10:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:03:16.39 ID:HY1MskrZ0
すると茜は小さく鼻をすすり。
「だ、だったら……茜ちゃん、最初はパレードから始めたいでーす!
劇場の前の道路をこう、サンバサンバのカーニバルで練り歩きながら駐車場に入ってくるの」
11:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:04:19.58 ID:HY1MskrZ0
===
とはいえ、夢というヤツは決まって最後に覚めて終わる。
アイディアをあらかた出し尽くすと、茜は落ち着くように息を吸い込んでから。
12:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:05:31.05 ID:HY1MskrZ0
「そこんとこ、プロデューサーだって言うならキチンと把握していなくっちゃ。
いつかプロちゃんには言ったと思うけど、茜ちゃんが現場を盛り上げると、その愛くるしさがお茶の間の人に笑顔を生んで――」
「ゆくゆくは、世界を明るく照らす太陽に取って代わるアイドル……だっけな」
13:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:06:39.32 ID:HY1MskrZ0
そうして私は、今の今まで置きっぱなしになっていた紙袋を彼女の前へと差し出した。
受け取った茜が中身を机の上に出す。
14:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:07:20.05 ID:HY1MskrZ0
「……茜ちゃん足四本も無いよ?」
「一足はどうみても俺の分だろ? 茜の足には大きすぎる」
15:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:08:13.88 ID:HY1MskrZ0
===
――さて、それからおよそ三時間後。
私は茜と劇場内のメインホール、そのステージ裏で待機していた。
16:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:09:07.33 ID:HY1MskrZ0
「それでは歌声とお笑いのコラボレーション、ぷっぷかリボンのお二人で〜す」
ステージ中央、マイクを握った美也の紹介で春香たち二人が舞台に飛び出る。
17:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:10:12.17 ID:HY1MskrZ0
「そ、そうか? こういうことには慣れてなくて。……しかし凄いな。茜たちはいつもこんな緊張の中で出て行くのか」
「いやー……この状況で改めて関心されたってね?
プロちゃんってばプロデューサーなのに、大勢の前で発表したりするの慣れてないの?」
18:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:11:24.54 ID:HY1MskrZ0
>>17訂正
〇「いやー……この状況で改めて感心されたってね?
×「いやー……この状況で改めて関心されたってね?
19:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:12:32.91 ID:HY1MskrZ0
すると、そんな私の醜態に呆れたのか茜が大きなため息をついた。
彼女は手近な椅子に座った私の前にしゃがみ込むと、その手をこちらの膝に乗せ。
20:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:13:17.48 ID:HY1MskrZ0
「……よーし、やったろうじゃないか!」
そうして私は気合一発、鼻息も荒く立ち上がった。
さらにはそんな私に寄り添うようにして茜もすっくと立ち上がると。
21:名無しNIPPER[sage]
2018/12/03(月) 23:13:59.59 ID:HY1MskrZ0
「それではいよいよ真打ち登場ですぞ〜」
美也が舞台から手招いた。「ねぇプロちゃん」と振り返った茜が私に笑いかける。
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