6: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:15:06.53 ID:rpP0yHwMo
『ここのところ仕事詰め込んでたんですし、有給使って今日と明日はゆっくりしてきてくださいね。あの子達なら大丈夫ですから』
親父の無事を確認したから帰ろうとしたタイミングで、事務員のちひろさんから状況確認の連絡があった。そのまま戻るつもりでいたのだけど、会社が気を使ってくれたのか夫婦水入らずの時間を過ごしてくださいね、と電話を切られてしまう。
「今日と明日は、こっちでゆっくりしておいでってさ」
7: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:18:11.64 ID:rpP0yHwMo
「いち、に、さん、し! に、に、さん、し!」
あてもなくぶらぶらと歩いているとラジオ体操の歌が流れてくる。その方向へと足を向けると懐かしい光景が目に入って来た。
「ここさ、俺の母校」
8: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:18:42.03 ID:rpP0yHwMo
「じゃあさ、今からしてきなよ」
「へ?」
「逆上がり、見ててあげるからさ。大人になった今だと案外簡単にできるかもしれないよ?」
9: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:19:33.88 ID:rpP0yHwMo
ピー助。その名前で俺を呼ぶのは、同じ小学校に通っていたやつくらいだ。つまりこの先生は……。
「え、なに? 知り合いなの!?」
「俺の同級生、っぽい……」
10: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:21:04.71 ID:rpP0yHwMo
「まさかピー助君がこっちに来ていたなんて。一言言ってくれたらよかったのに」
「いやぁ、いかんせん急な話だったので……お久しぶりです、先生」
この学校を卒業して20年近くが経って、かつて俺たちのクラスの担任だった現校長先生は熱血教師から落ち着いた初老の教師へとレベルアップした一方で、あれだけフサフサだった髪の毛はすっかり寂しくなっている。俺はハゲないぞ! と言っていた過去の先生へ。現実は残酷でした。
11: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:22:26.12 ID:rpP0yHwMo
「さようならー!」
「はい、さようなら」
「元気のいい子供達だなぁ」
12: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:25:14.36 ID:rpP0yHwMo
「わっ」
「かわいいよ、似合ってる」
カミさんの髪を両手で持ってツインテールを作る。恥ずかしさが極まったのかあわあわとしているが、そんな姿も愛おしくてついついツインテールを揺らしてしまう。
13: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:26:54.08 ID:rpP0yHwMo
「「「かんぱーい!!」」」
ビールが注がれたグラスが重なり心地いい音が響く。
「ふぃー……最高」
14: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:28:20.61 ID:rpP0yHwMo
「そうだぞー。竹井なんか奈緒さんのユニットの大ファンで、奈緒さんがプロデューサーと結婚した時はそれはもう仕事が手につかないくらいに落ち込んでたのに、その相手がよりにもよってお前だと知った時の顔は今でも忘れられないよ……人間ってあんなに絶望的な顔ができるんだな」
「あはは……」
竹井は学年で一番運動ができて中学高校とバスケ部のエースだった男だ。逆上がりができない俺をいつもバカにしていたけど、その相手に推してたアイドルを取られたんだ。凹むのも無理はないか。まぁその悔しさをバネに社会人バスケで活躍しているらしいからザマァ見ろとはとても言えないんだけどね。
15: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:30:53.09 ID:rpP0yHwMo
「そうそう。ピー助君にはまだ話してなかったんだけどね……じゃん!」
梅ちゃんはポケットから小さな箱を出し、パカっと開けるとそれは小さく輝いた。
「おっ! それ、結婚指輪? 梅ちゃん結婚するんだ。相手は誰々? 俺の知ってる人?」
26Res/22.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20