7: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:18:11.64 ID:rpP0yHwMo
「いち、に、さん、し! に、に、さん、し!」
あてもなくぶらぶらと歩いているとラジオ体操の歌が流れてくる。その方向へと足を向けると懐かしい光景が目に入って来た。
「ここさ、俺の母校」
「へぇ……」
柵の向こうから校舎を覗き見る。生徒の数は多くはないけど、元気一杯にみんな走り回っている。休み時間に教室を飛び出してみんなで鬼ごっこやドッジボールをした記憶が蘇る。
「奈緒はさ、逆上がりできた?」
「どうしたんだよ、藪から棒に」
「なんとなく、目についたからかな?」
グラウンドの端にポツンと大中小の鉄棒が並んでいる。小学校を卒業してから見ることはなかったけども、いざ目の当たりにすれば苦い思い出が蘇る。
「俺さ、結局逆上がりできなかったんだよね」
「なんか、意外かも」
「みんなが簡単にやってのける中で、俺だけ出来なくて。いつも体育の先生が後ろで補助してくれてた。逆上がりが出来なくてみんなから笑われてさ、すっげー悔しくて。親父と一緒に練習もしたんだけど、最後の最後まで出来なかった。逆上がりできなくたって、大人にはなれるって言い聞かせてきたけど……やっぱなんか、悔しいな」
逆上がりが出来なくたって良い会社に入れる。逆上がりが出来なくたって世界一のお嫁さんと結婚できる。逆上がりが出来ない=人生の負け組になるなんて道理はどこにもないんだけど、大人になった今もどこかしこりが残っていたみたいだ。我ながら女々しいと言うか、なんというか。
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