10: ◆XUWJiU1Fxs
2018/10/31(水) 02:21:04.71 ID:rpP0yHwMo
「まさかピー助君がこっちに来ていたなんて。一言言ってくれたらよかったのに」
「いやぁ、いかんせん急な話だったので……お久しぶりです、先生」
この学校を卒業して20年近くが経って、かつて俺たちのクラスの担任だった現校長先生は熱血教師から落ち着いた初老の教師へとレベルアップした一方で、あれだけフサフサだった髪の毛はすっかり寂しくなっている。俺はハゲないぞ! と言っていた過去の先生へ。現実は残酷でした。
「芸能事務所に就職してアイドルと結婚した! とは聞いていましたが、美人な奥さんで羨ましい限りです」
「美人だなんて……」
褒められたのが嬉しいのか、カミさんはフニャッとした顔になる。
「教え子たちが大人になって活躍して家庭を持って行く。それに勝る喜びはありませんよ。この校舎も、きっと満足して新しい役目を果たせるでしょうね」
「え?」
「あぁ……この街も少子化の波には勝てなくて、近くの学校と合併することになったんです。だからこの校舎も、来年には廃校になるんです」
「そう、だったんですか……」
廃校。たった四文字の言葉で、俺たちを作ってくれた思い出がもう二度と帰らない過去のものとなってしまう。
「校舎も取り壊されるんですか?」
「いえ。幸いなことに、校舎を再利用して生涯学習施設や地域のコミュニティの場として活用される予定です」
「そうですか……良かった……」
心からホッとして息を吐く。目的は変われども、この学校が残り続けることが嬉しかった。そりゃあ良い思い出ばかりじゃないけど、それでも6年間をみんなで過ごしたこの場所は特別だったんだ。
26Res/22.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20