31: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:57:02.47 ID:+QmI8LWq0
春の陽光が、少し鬱陶しくなる頃。
まゆは、バラエティ番組に出演した。
他の事務所のアイドルが出演するはずだったが突然体調を崩し、まゆに代役の依頼が回ってきた。
32: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:57:52.41 ID:+QmI8LWq0
まゆは表面上はにこにことしながら、内心は焦っていた。
この番組をプロデューサーさんが見たら、まゆにがっかりするかも。
まゆはスカートを、周りから見えないようにぎゅうと摘んだ。
33: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:58:36.77 ID:+QmI8LWq0
収録時とは打って変わって、明確な拒絶が表情に現れていた。
嫌悪と恐怖。
まゆは裕子がプロデューサーに好意を持っていないことに安心し、また一方で彼女の態度に苛立ちを覚えた。
34: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:59:11.76 ID:+QmI8LWq0
・・・・・・
総選挙が終了した、5月末。
緊張した空気をほどくために、プロダクションのアイドル同士で食事会が催された。
35: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:59:44.46 ID:+QmI8LWq0
「いま人格をかえちゃうクスリをつくってるんだけど、まゆちゃんは欲しい〜?」
志希はまゆに尋ねた。
36: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:00:35.76 ID:+QmI8LWq0
・・・・・・・・
蝉が低く唸り声を上げる夏の日。
まゆはプロデューサーにこう言われた。
37: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:01:19.89 ID:+QmI8LWq0
その日から1週間後。8月16日。
まゆは再び、プロデューサーの家に来た。今度は、ふたりきりで。
まるで初めてのことのように、まゆは胸を高鳴らせた。
38: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:02:50.98 ID:+QmI8LWq0
「鍵が、かかってます」
努めて冷静に、まゆは自分に言い聞かせるように、そう返した。
プロデューサーはまゆの顔色をのぞきこんだ後、表情を作った。
39: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:03:46.77 ID:+QmI8LWq0
プロデューサーはゆったりとした動作でドアを解錠し、まゆを手招きした。
「どうぞ。ドアの開け方はわかるかな?」
それは、どういう意味でしょう。
40: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:04:19.95 ID:+QmI8LWq0
「ど、の、へ、や、が、い、い、か、な」
靴を履いたまま、まゆを追い越してプロデューサーは廊下に上がった。
41: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:04:48.20 ID:+QmI8LWq0
「麦茶!」
ここで、プロデューサーが振り返った。『笑顔』。
「麦茶だな?」
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