39: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 08:03:46.77 ID:+QmI8LWq0
プロデューサーはゆったりとした動作でドアを解錠し、まゆを手招きした。
「どうぞ。ドアの開け方はわかるかな?」
それは、どういう意味でしょう。
まゆはノブに手を掛けて、ドアを引いた。残酷なほど、なめらかに開いた。
そこから見える風景は変わっていない。
だが、まゆには初めての光景に思えた。
リビングへ向かう扉も、階段も、それらが連なっている廊下でさえ、自分を耐えがたいほどに拒絶しているように感じた。
「どうした?」
プロデューサーが、まゆの背後から声をかけた。表情はわからない。
それがよかったのだろうか。わるかったのだろうか。
まゆははじき出されるように、家に入った。真夏だというのに、中はしんと冷え切っていた。
ぱたり、と、背中のほうでドアが閉じる音がする。
カチャリ。カチャリ。カチャリ。
拍子抜けするくらい、軽い音だった。
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