27:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:27:11.97 ID:eCrKDArS0
卯月たちの不安は的中した。
商店街に訪れる客が一向に増えないまま外はどんどん雨足を早め、
雷が鳴りはじめた頃にはもう、突風と土砂降りで大荒れの天気となった。
28:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:27:44.08 ID:eCrKDArS0
(……あっ!)
見覚えのある長い黒髪の少女が座席の隅っこに座っていた。
凛である。
29:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:28:11.93 ID:eCrKDArS0
※
(あ、危うく声出して笑うところだった……落語ってこんなに面白かったんだ)
落語のプログラムが終わり、凛は満足したようにひと息ついた。
30:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:28:40.08 ID:eCrKDArS0
※
「…………あの、さ」
「は、はいっ……グスッ な゛んでじょう゛」ズビ
31:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:29:14.96 ID:eCrKDArS0
「でも、本当に良かった。こういうの、生で見るの初めてだったけど……卯月、すごく楽しそうだったし。わたしも楽しかった」
凛が励ますように笑いかけると、卯月はこくりと頷き、そして
「……うんっ。私、楽しかったです!」
32:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:29:48.72 ID:eCrKDArS0
○
翌朝、台風一過のすがすがしい青空であった。
いつものように友達とおしゃべりしながら登校していた卯月は、
33:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:30:26.81 ID:eCrKDArS0
「はあっ? い、いきなり何……べつに、そんなことないよ」
「えへへ……あと、照れ屋さん」
「からかわないでよ」
34:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:31:09.15 ID:eCrKDArS0
※
異色のコンビの噂が広がっても凛は相変わらずクラスで浮いた存在のままであった。
というより、これまで以上に周りから距離を置かれるようになった。
35:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:32:06.54 ID:eCrKDArS0
――さて、ここでひとつ断っておかなければならないのは、
このSSが複雑な人間関係を描くことを主題としているわけではない、ということである。
つまり、本来であればここで卯月が、凛と、凛のことを悪く言うクラスメイトの両方から板ばさみにあい、
それによって苦悩するというシーンがあるのが自然だろう。
36:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:32:51.11 ID:eCrKDArS0
――その日、凛は帰宅してからハナコの散歩に出かけ、そしていつもとは違う道を行った。
以前来た時と同じように、川面には夕日に伸びた自分とハナコのふたつの影が揺れて映っている。
そうして秋の夕暮れの景色に心を奪われながらゆっくり歩いていると、ふと、背後から声をかけられた。
37:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:33:18.97 ID:eCrKDArS0
「わあ、ほんとに綺麗な夕日……」
そうして二人は以前と同じように河原に腰を下ろし、並んで夕日を眺めた。
「……ねえ卯月。ひとつ聞いてもいい?」
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