7: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:16:57.89 ID:wWXdAL2J0
両親は話し合う余地もなく、賛成してくれた。いいよの一点張り。プロデューサーもその場にいたんだけど、ぽかんとしてた。
“両親の激しい反対に遭うも必死の説得により……”、そういうドラマを2人で描いていたから。
「なんだか物足りないわ」
8: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:18:18.58 ID:wWXdAL2J0
デビューは成功して、お金もずいぶん稼いだけれど、私はずっとプロデューサーさんを困らせてばかりだった。
お仕事が、お仕事の方からやってくるようになっても私はプロデューサーさんに手加減をしなかった。
手のかからない、どうでもいい大人になんてなりなくたかったから。
ある日、私はいつものように彼に意地悪をした。
9: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:18:56.20 ID:wWXdAL2J0
「キスしてもいい?」
ここまでしても、プロデューサーさんは無反応。
「こっちを向いてくれないと、首を斬り落としてでもキスするわ」
10: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:19:43.15 ID:wWXdAL2J0
部屋から出るのもわずらわしくて、また話しかけるのも気後れで、私はパソコンのモニターを見た。
知らない女の子。銀色の髪で、切れ長の瞳。鼻が少しとがっていて、可愛いけれど、どこか狐みたいな子が映ってる。
「二股は嫌よ」
11: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:20:34.97 ID:wWXdAL2J0
「奏のプロデューサーをやめるから」
この世界に私の思い通りにしていいものなんて、本当はないんだって。
「それは……奇妙ね」
12: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:21:37.80 ID:wWXdAL2J0
「本気?」
彼は私の言葉を聞くのも煩わしそうに、うなずいた。
「常務が新しいユニットをつくるんだ」
13: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:22:08.73 ID:wWXdAL2J0
「そうかな」
「そうよ」
プロデューサーさんは不貞腐れたような顔で私の方を見た。そして、常務から言われたことを教えてくれた。
14: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:23:34.84 ID:wWXdAL2J0
「断れなかったの」
「断れたのかな」
「あなたは私のプロデューサーよ」
15: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:24:03.75 ID:wWXdAL2J0
「奏はぼくよりずっと、大人だと思っていたんだけど」
彼はそう吐き捨てて、部屋から出ていった。
私は思わぬ反撃に立ち竦んでしまって、怒ることも、追いかけることもできなかった。
16: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:51:52.59 ID:wWXdAL2J0
一週間頭を冷やしてから、プロデューサーさんに電話をかけた。
でも彼は出てくれなかった。
LINEもしてみたけれど、既読もつかない。
私はオフの日なのにプロダクションに行って、プロデューサーさんを探した。
17: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 21:52:38.48 ID:wWXdAL2J0
「私のプロデューサーさんは?」
ろくな挨拶もせずに、私は常務に尋ねた。
常務は表情をかえずに、背筋が凍るような、ひやややかな声で言った。
18: ◆u2ReYOnfZaUs
2018/06/22(金) 21:57:46.69 ID:wWXdAL2J0
※17を訂正します
19: ◆u2ReYOnfZaUs
2018/06/22(金) 21:58:42.45 ID:wWXdAL2J0
「私のプロデューサーさんは?」
ろくな挨拶もせずに、私は常務に尋ねた。
常務は表情をかえずに、背筋が凍るような、ひややかな声で言った。
20: ◆u2ReYOnfZaUs
2018/06/22(金) 22:29:58.20 ID:wWXdAL2J0
「彼は辞表を提出しこのプロダクションを去った。
新しいプロデューサーは、プロジェクト加入が正式に決まり次第通知する」
「辞表? ユニット?
なんのことだか……」
21: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 22:42:18.91 ID:wWXdAL2J0
常務はただ淡々と、事実を突きつけてくる。だから否定もできないし、反論もできない。
それでも私は反撃がしたくて、言い返した。
「私は、常務のつくるユニットには参加しません」
22: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 23:16:46.11 ID:wWXdAL2J0
私は、頭を深く下げて部屋から出た。
常務に屈服したわけじゃない。自分の幼稚さに、頭が重くなった。
傷つけるためだけの信頼。甘えるためだけの冗談。
私はプロデューサーさんが私のことを真剣に考えてくれるように仕向けたけれど、彼の心を真剣に考えたりしなかった。
23: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 23:31:06.86 ID:wWXdAL2J0
私はもう一度頭を下げて、常務のプロジェクトに参加した。
日本で……世界で一番のアイドルになるために。
そしたらきっと、エンドロールに名前を書いてもらえる。
私の名前が、彼の隣に。
24: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/22(金) 23:31:37.62 ID:wWXdAL2J0
おしまい
25:名無しNIPPER[sage]
2018/06/23(土) 00:54:47.54 ID:0uDSOG7SO
>>17-19
?
26:名無しNIPPER[sage]
2018/06/23(土) 01:54:07.04 ID:Gmx5KTTDO
なんだこのオチ…
27:名無しNIPPER
2018/06/23(土) 10:40:29.22 ID:Baarl6gv0
こういうの割と好き
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