2:名無しNIPPER[saga]
2018/06/04(月) 22:33:24.01 ID:zAvML4irO
二回目は故意だった。
最初の日から数日が経ち、今度は雨降りで部活が中止になった日のことだった。
以前より早い時間、それに朝から雨の日だ。まさか彼女はいるまいという気持ちと、いてほしいという気持ちが入り乱れていた。
それを例えるなら、ファンタジーに憧れる子どもの気持ちというか。
彼女と知り合ったシチュエーションが、漫画の世界の出来事のような気がして、浮かれていたのかもしれない。現実に魔法使いも天使も悪魔も神様もいなくても、どこかで自分が主人公になれる物語を探していた。こういうのを厨二病って言うのかな。
3:名無しNIPPER[saga]
2018/06/04(月) 22:34:59.45 ID:zAvML4irO
その言葉の真意を聞けるほどの勇気は俺にはなかった。
ただ、ロクに会話もできなかった前回で呆れられることなく、再び会うことができたということが嬉しくてたまらなかった。
この出会いを運命と呼んでいいのであれば、俺はなんと幸運な星の下に生まれてきたんだろう。
「藤くんは、部活帰りですか?」
「あ、いえ、今日は雨でお休みでした。悠里さんは何かやってるんですか?」
4:名無しNIPPER[saga]
2018/06/04(月) 22:36:14.09 ID:zAvML4irO
出会ってから一ヶ月ほどで、彼女は私服で神社に来るようになった。
梅雨も明けてしまい、毎日のように会っていた悠里さんとも週一回、会うか会わないかくらいになった頃だ。ちょうど夏休みの始まる時期だったし、学校もないのにわざわざ出てきてくれているんだろうか。
曰く、「藤くんと会うためにおめかししてるんだよ」とのこと。そんなことを彼女に言われて喜ばない男はいないだろう。
毎度毎度ジャージ姿なのが恥ずかしくなったけど、私服を着た方が彼女の美貌との釣り合わなさを痛感させられそうな気がして、俺は部活で揃えたジャージを着続けた。
その期間の話も特別面白いことはない、今日の部活はこうだった、だとか、悠里さんは夏休みに特に予定はない、だとか。
5:名無しNIPPER[sage saga]
2018/06/04(月) 23:05:59.28 ID:mZD3qGYf0
いちいち描写がいいね
一行空けた方がいいかも?
オリかな?
6:名無しNIPPER[saga]
2018/06/04(月) 23:44:42.12 ID:zAvML4irO
>>5
了解です、ご指摘ありがとうございます。
オリジナル作品です。
7:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 00:28:35.45 ID:lfpzaq0oO
「ちょっと、考えさせてもらってもいいですか?」
その言葉だけで、俺の頭はいっぱいになった。
考えるってことは、花火大会に行くような決まった相手はいないということだろう。少なくとも、俺がスタート地点に立ててすらいないというわけではないんじゃないか。
8:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 00:29:09.40 ID:lfpzaq0oO
「浴衣、似合ってますね」
初めて会った頃ではとても口にできなかったような言葉も、どうにか伝えることができた。少しは成長したのかもしれない。
ありがとう、と返されて、彼女は炭酸ジュースを手渡してくれた。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 00:29:47.85 ID:lfpzaq0oO
これ以上踏み込んでいいのか、踏み込むべきでないのか。
その冷静な判断が、俺は出来なかった。いや、したくなかったと言うべきかもしれない。落ち着こうとすれば落ち着こうとするほど、今を逃せば彼女と近づける機会が無くなる気がした。
吊り橋効果ではないけれど、雰囲気に乗せてしまえば彼女も勘違いしてくれるんじゃないかと、そう思っていた。
10:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 00:58:48.03 ID:lfpzaq0oO
花火大会が終わってからも、俺たちの関係は変わらなかった。
相変わらず雨の日になれば神社に集まり、そうでなければ変わらぬ日常を過ごす。
あの花火大会が夢だったんじゃないかってくらい、何も変わらなかった。数少ない変化といえば、悠里さんは9月になっても私服で神社に来るようになった。
11:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 01:00:08.19 ID:lfpzaq0oO
その場で即答することができなかったのは、悠里さんと俺の不安定な関係のせいだった。
もし俺が悠里さんに既にフラれているのであれば、キッパリ断ち切って諦めようと思った。そして彼女、珠理ちゃんと新しく青春すれば良い。
けれど、告白された時点ではどうにもそうは思えなかった。せめてもう一度、悠里さんに会わねばと思った。
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