雨が降ればいいのに
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7:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 00:28:35.45 ID:lfpzaq0oO
「ちょっと、考えさせてもらってもいいですか?」

その言葉だけで、俺の頭はいっぱいになった。

考えるってことは、花火大会に行くような決まった相手はいないということだろう。少なくとも、俺がスタート地点に立ててすらいないというわけではないんじゃないか。

容姿で彼女に釣り合わないならスペックだけでもと、夏休みの宿題も、普段より厳しい部活の練習も一生懸命こなした。

そんな単純な俺にしてみると、その次に会った際に言われた、「人混みが苦手だから……ここから見るのでいいのなら」という返答は、望外の栄誉だった。

ひょっとすると、彼女もちょっと仲のいい友達、よりは俺のことを親しく見てくれているのではないか。いやそんな期待はするな。いやでも。

繰り返し考えては悶々としていると、花火大会はあっと言う間に当日を迎えた。

さすがにこの日はジャージで行くことはせずに、デニム地のハーフパンツと、シンプルな白いVネックのTシャツにした。変に着飾っても似合わないのは分かっている。

雨の日はいつも、先に来ているのは悠里さんだったけど、この日ばかりは俺が先に来た。誘った男が待たせるなんて、と柄にもなく紳士的になっていた。

花火が上がる前に、彼女は下駄を鳴らしながら「藤くんごめん、遅くなりました」とやって来た。浴衣姿で髪をハーフアップにした彼女は、正にこれぞ大和撫子、と言わんばかりに輝いている。



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