雨が降ればいいのに
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8:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 00:29:09.40 ID:lfpzaq0oO
「浴衣、似合ってますね」

初めて会った頃ではとても口にできなかったような言葉も、どうにか伝えることができた。少しは成長したのかもしれない。

ありがとう、と返されて、彼女は炭酸ジュースを手渡してくれた。

「屋台まで行けないから、代わりにこれ、どうぞ」

今度は俺がお礼を伝えて、それをありがたく受け取った。雨の降らない日に会うのは何だか不思議な気がして、「何かちょっと、変な感じですね」と二人で笑った。

「雨が降らなくて良かったですね」

悠里さんから同意を求められて、頷きながら返す。

「本当に。雨が降ったらどうするつもりだったんですか?」

「どのみち雨が降っても、ここに来るじゃないですか」

……浴衣は着てこなかったとは思いますけど、と付け足された言葉に悶えたのは、秘密にする必要もないだろう。

ジュースがどれだけ喉を潤してくれてもすぐにカラカラになるほど、俺は緊張していた。傾国の美女が、浴衣で着飾って平凡な俺の隣にいる。これをファンタジーと呼ばずして、何と呼べばいい?


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