雨が降ればいいのに
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9:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 00:29:47.85 ID:lfpzaq0oO
これ以上踏み込んでいいのか、踏み込むべきでないのか。

その冷静な判断が、俺は出来なかった。いや、したくなかったと言うべきかもしれない。落ち着こうとすれば落ち着こうとするほど、今を逃せば彼女と近づける機会が無くなる気がした。

吊り橋効果ではないけれど、雰囲気に乗せてしまえば彼女も勘違いしてくれるんじゃないかと、そう思っていた。

クライマックスの花火が夜空から消えると、俺は隣に座る彼女に伝えた。

「俺、悠里さんのことが好きです」

彼女に聞こえるんじゃないかと心配するほど心臓の音が大きく鳴っていたけれど、その言葉は意外なほど流暢に流れ出た。

彼女は驚いたように、でも嬉しそうに、そしてどこか悩ましげにこちらを見ながら「ありがとう」と口にした。

そして数秒、黙って見つめ合った。

「付き合って下さい、彼女になって下さい」と口にできなかったのは、逃げ道を作りたかったからなのかもしれない。

彼女は何かを伝えようと口を動かしかけたが、開かれることはなかった。

もしかしたら彼女から「付き合って」と言ってもらえるんじゃないかと、都合のいい妄想は現実にはならなかった。ただ黙って座り続け、手を重ねるだけだった。


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